ひなた荘へようこそ





外は明るい・・・
太陽もまだ高い位置にある・・・

明るい・・・
明るいはずなのに・・・・・・



ラブひな
ひなた荘管理人記録[1P]

『笑っていてほしいから・・・』
(完結編)





チッチッチッチッ・・・

時計の音だけが微かに沈黙を許さない・・・


カンカンカンカン・・・

廊下を走る音が聞こえる・・・


その音はだんだん大きな部屋に近づいてくる・・・

その部屋の近く・・・

椅子に男女が一人ずつ・・・
俯いて座っている・・・


カンカンカンカン・・・


チッチッチッチ・・・

普段聞いている何気ない音でも・・・
今回だけは・・・とてもうるさかった・・・


カンカン・・・


足音が止まる・・・

大きな部屋の前でその足音が止まった・・・

女性が六人・・・
部屋の前で立ち止まっている・・・

どうやら足音の主はこの六人の女性らしい・・・


そして・・・一匹・・・ペットのような生き物が飛んでくる・・・

後に、椅子に座っている男性の肩に乗る・・・


『景太郎・・・』

景太郎『・・・成瀬川・・・
     ・・・・・・みんな・・・
     ・・・連絡もしてないのにどうして・・・』

『タマが知らせてくれたんですよ・・・』

景太郎『むつみさん・・・』

むつみ『・・・私達、聞いたときにすぐ飛び出してしまったので・・・
     電話に気がつきませんでした・・・』

『・・・だから誰もでなかったのか・・・』


景太郎の横に座っている女性は素子だった
二人一緒に来たのだろう・・・


なる『・・・しのぶちゃんは・・・?』

景太郎『・・・・・・・・・・・・・・』


景太郎は黙って部屋の扉・・・
その上にある光ってるプレートを見上げる・・・

・・・プレートには
「手術中」
という文字が書いてある・・・・・・


『・・・まいったな
 まさか本当に・・・』

景太郎『・・・はるかさん・・・・・・』

はるか『・・・一体何があった?
     聞いた話じゃ交通事故だと言っていたが・・・?』

『みゅ』

景太郎『・・・・・・交通事故だと思います』

『思う・・・っちゅうのはどういうことや?」


キツネが真剣に問いかける


景太郎『・・・俺にもよくわからないんですよ・・・
     ・・・・・・すごい音がした後・・・ 駆けつけたら・・・』

キツネ『・・・・・・・・・・・・』

はるか『・・・一緒にいたんじゃなかったのか?
     お前がしのぶと一緒に出かけるとこを見た気がするんだが・・・』

景太郎『・・・・・・少し目を離したら・・・
     ・・・いなくなってて・・・』

素子『・・・私達があんなくだらないことで揉めあっていたから・・・』

はるか『・・・しのぶもそんなに子供じゃないんだ
     お前らの責任じゃない・・・ 誰の責任でもない・・・』


・・・誰も悪くはない・・・・・・


景太郎『・・・・・・・・・・・・・・・・・・』

『しのむ・・・
 どないしてしもたんや・・・?』


突然の出来事でさすがのスゥもいつものテンションを失っていた・・・


『・・・死んでないんだよな・・・?』


サラが静かに問いかける・・・


景太郎『・・・大丈夫だよ
     ・・・・・・しのぶちゃんは・・・死んだりしないさ・・・』

スゥ『ほんまに・・・?』

景太郎『・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
      ・・・大丈夫、きっと元気な顔で・・・』


突然、「手術中」のランプが消えた


景太郎『!!』


その直後、扉が開き
看護婦がベッドを移動させる

ベッドには・・・
生気のこもっていないしのぶの姿があった・・・


景太郎『しのぶちゃん!』

素子『しのぶ!』


・・・返事はない


少し遅れて扉から出てきたのは
・・・夥しい量の血がついた服を着た男性

おそらく手術を行った先生だろう


『しのぶ!!』


廊下の方から聞こえてくる声・・・

男女が一人ずつ立っている・・・


はるか『・・・あなたたちは』

『しのぶの両親です・・・』

景太郎『・・・・・・・・・・・・』

しのぶ母『それで・・・娘は・・・しのぶはどうだったんですか!?』


Dr.『・・・最善の処置は施しました・・・
   ・・・・・・しかし・・・ 長くもっても・・・明日が峠でしょう・・・』


・・・・・・この瞬間
周りの空気が凍りついた・・・・・・


しのぶ母『・・・そ・・・んな・・・
      う・・・嘘です・・・よね・・・?』


Dr.は静かに首を横に振った・・・


しのぶ母『・・・・・・!!
      ・・・・・・・・・・・・・・』


しのぶの母はその場に膝をつき
顔を手で覆った・・・・・・・・・・・

微かに声が漏れている・・・・・・


しのぶ父『・・・もう、どうしようもないんですか・・・?
      しのぶは・・・助からないんですか!?』

Dr.『・・・あとは、本人の気力次第です・・・・・・』


そう言い残してDr.は集中治療室へ向かった


スゥ『・・・・・・なぁ、"とうげ"って・・・何や・・・?』

キツネ『・・・・・・・・・
     目を閉じて・・・ もう・・・二度と・・・目をあけられんことやろな・・・』

スゥ『・・・しのむ、眠っとるんか?』

キツネ『・・・・・・今は眠っとる・・・
     でもな、しのぶががんばれば・・・また目を覚ますかもしれへん・・・』

はるか『そうだ、まだ死んだわけじゃない・・・』


そして集中治療室へと足を進めた・・・


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


素子『・・・・・・なぜ事故につながったんでしょうか・・・
    ・・・車側の運転が悪かったのか・・・しのぶが飛び出したのか・・・』


原因を知る者はいなかった

運転手も治療を受けている
・・・その現場にいたしのぶも・・・・・・・・・


『あ・・・ あの・・・』

なる『・・・あなたは・・・?』

『あの・・・、私・・・前原さんと同じクラスの・・・』

なる『そう・・・』

友人『す すみません!
    わ 私の妹が・・・』


その言葉を聞いた時、
全員の足がピタリと止まった・・・


友人『私の妹が・・・こんな・・・こんなことに・・・』


彼女の声は震えた声だった・・・


むつみ『・・・何があったか、話してくれるかしら?』


友人『・・・・・・わ 私の妹が・・・
    ・・・道路に飛び出し・・・て・・・
    ・・・・・、・・・・・・・』

むつみ『・・・落ち着いて、
     大丈夫、誰も怒ったりしないから・・・』

友人『・・・・・・・・・・・・
    ・・・わ 私の妹が・・・ 道路に・・・飛び出しちゃ・・・って・・・
    く 車がきた時・・・・・・前原・・・・・・さん・・・・・・が・・・・・・』


・・・つまり、こういうことらしい

小さな女の子が道路に飛び出した
車が迫っていることに気付いたしのぶは・・・女の子を助けようとして・・・

キキィィィィィ・・・・・

・・・女の子を助けることはできたが・・・
しのぶ自身は・・・・・・・・・・・・・


しのぶ母『・・・そ そんな・・・
      なんで・・・後のことを考えないの あの子は・・・・・・
      そんなかっこいいこと・・・しなくてもいいじゃない!』


『・・・でも』


景太郎が口を開いた


景太郎『・・・・・・しのぶちゃんはそういう女の子なんです・・・
      俺に何がわかるかと言われれば・・・それまでなんですけど・・・
      いつでもしっかりしていて・・・
      素直な女の子なんです・・・
      ・・・だから・・・ しのぶちゃんを・・・叱らないでください・・・』


しのぶ母『・・・そ・・・んなこと・・・
      わかってるわよ・・・
      ・・・でも!』

はるか『・・・まぁ、落ち着いてください』

しのぶ母『・・・なら、どうすればいいっていうんですか!?
      こんなときでも笑っていろとでも言うんですか!?』

はるか『あなたが取り乱したからよくなるわけじゃないでしょう!?』


珍しいはるかの大声に
あたりが"しん・・・"と静まった


しのぶ母『・・・・・・・・・どうしろって・・・言うのよ・・・』

しのぶの母は、膝をついて・・・泣き崩れた・・・

横で、しのぶの父が慰めている・・・


友人『・・・わ 私が・・・・私がしっかりしていれば・・・!!』


しのぶの友人も顔を覆って泣き出してしまった・・・


むつみ『・・・ううん、誰のせいでもない
     あなたのせいでも・・・あなたの妹のせいでも・・・
     私のせいでも・・・みんなのせいでも・・・・・・・
     ・・・・・・しのぶちゃんのせいでもないの
     ・・・誰も悪くないのよ・・・』

友人『・・・でも・・・・・・』

むつみ『・・・これは運命・・・
     神様が決めたことなの・・・
     ・・・人はいつか死んじゃうけれど・・・
     死ぬときは人それぞれ・・・
     しのぶちゃんはそれが早かっただけ・・・・・・』

なる『むつみさん・・・!
    そんな言い方・・・・・・』

むつみ『・・・そうですね
     言い方はひどいかもしれない・・・
     ・・・でも、ほかに・・・どんな言葉が並べられるんです・・・?』

なる『・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・』

むつみ『・・・でも、私の言ったことがすべての真実じゃない・・・』

なる『・・・・・・え?』

景太郎『・・・そうですよ
     ・・・・・・運命は変えられる・・・・・・』

なる『・・・・・・そうだね
    なにもかも・・・決められたとおりの世の中なんて嫌・・・
    運命は・・・自分で切り開いていく・・・』

むつみ『・・・そういうことです・・・』

景太郎『しのぶちゃんも・・・それに気づければ・・・』

なる『・・・きっと気づくわ
    ・・・・・・ううん、絶対気づくよ
    ・・・・・・・・・たとえ気づかなかったとしても・・・
    神様が・・・しのぶちゃんを見放すわけがない・・・』

むつみ『・・・そうですね
     しのぶちゃんみたいな子・・・ いまどきいませんよ・・・』

景太郎『・・・もし、しのぶちゃんがこのまま・・・起きなかったら・・・
     ・・・・・・神様が見捨てたのなら・・・』







神様だって怨んでやる・・・・・・・・・・







なる、景太郎、むつみの声がそろった・・・・・・


・・・その後、長い沈黙が流れた・・・・・・





しのぶ(・・・あれ?
     ・・・・・・ここ、どこだろう・・・?
     私・・・どうしちゃったんだろう・・・?)


・・・しのぶの目には何も映らなかった・・・
見えないのではない・・・
見えるものがないのだ・・・

・・・今、しのぶは何もない空間にいる・・・


しのぶ(・・・そうだ、私・・・
     女の子を守ろうと思って・・・・・・道路に飛び出したんだっけ・・・
     ・・・あの子、無事かな・・・?
     ・・・・・・私は・・・無事だったのかな・・・?)


・・・・・・しのぶの目の前に一筋の光が現れた・・・


しのぶ(・・・あれは・・・?
     ・・・・・・そうか、私・・・死んじゃったんだ・・・
     ・・・あの光の向こうには・・・天国があるのかな・・・
     ・・・・・・天国って本当にあるんだ・・・
     でも・・・、私なんかが天国にいけるのかな・・・?)


「なら・・・あなたは"地獄"に落ちたいの・・・?」

しのぶ『誰・・・?』

しのぶの前に青白い光が現れた・・・

光はだんだん人型になっていき、
やがて少女の形になった・・・


?「私は・・・・・・あなた」


・・・・・・しのぶには今の言葉の意味が理解できなかった


しのぶ『あなたが・・・私・・・?』

?「そう・・・、あなたがいるから 私はいるの」

しのぶ『・・・えっと、よくわからないんだけど・・・』

?「・・・いずれわかるよ
  詳しく言うなら、私は・・・人間の感情の一部である・・・"妬み"」

しのぶ『・・・ねたみ・・・』

?「そう・・・
  人間の感情はいろいろあるの・・・
  その感情が大きくなって・・・私の中の・・・私を生み出した
  つまり、あなたの中の私を生み出したのはあなたであり、また・・・私である」

しのぶ『・・・・??』


ややこしくてよく理解できていないようだ


?「わからなくてもいいよ・・・
  とにかく、あなたの中の"妬み"という感情が私を生み出したの・・・
  ・・・だから、今・・・あなたの中には"妬み"という感情はないはず・・・」

しのぶ『・・・・・・私・・・妬みなんて・・・』

?「・・・・・・あなたは・・・浦島センパイのこと・・・どう思ってるの・・・?」

しのぶ『・・・え?』

?「・・・センパイのこと・・・好きなの?嫌いなの・・・?」

しのぶ『・・・そ そんな・・・』

?「・・・どうなの? 答えて・・・」

しのぶ『・・・・・・好き
     ・・・私、センパイのことが好き・・・
     ・・・・・・好きだけど・・・なぜか・・・胸が痛くなる・・・』

?「・・・"妬む"ことができないあなたにはその原因がわからないよ・・・
  ・・・・・・なるセンパイ・・・ わかるでしょ?」

しのぶ『・・・うん』

?「・・・あなたはなるセンパイに嫉妬していたの・・・」

しのぶ『・・・嫉妬・・・・・・』

?「・・・今のあなたにはわからないよ
  妬みという感情が抜けているのだから・・・」

しのぶ『・・・嫉妬だなんて・・・
     私・・・なるセンパイを尊敬しているのに・・・・・・』

?「・・・・・・そのなるセンパイを好きになった人・・・
   その人が・・・あなたの好きな・・・浦島センパイなの・・・」

しのぶ『・・・そ そうなんだ・・・』

?「・・・・・・なるセンパイも・・・嫌いというわけじゃないみたいだし・・・
   相思相愛・・・ あなたはそう見ていたんじゃないかな?」

しのぶ『・・・・・・・』

?「思い出さなくていいよ
   ・・・思い出せないんだから」

しのぶ『・・・でも、仕方ないよ・・・
     ・・・・・・好きになっちゃったんだから・・・』

?(悲しみ・・・か)

しのぶ『・・・だから 私もしょうがないんじゃないかな・・・って』

?「・・・・・・?」

しのぶ『・・・私だって好きになっちゃったんだもん・・・
     浦島センパイのこと・・・
     ・・・嘘なんかじゃない、
     ・・・・・・素直に・・・"好き"なんだよ・・・』

?「・・・そう・・・
  ・・・・・・"妬み"が抜けたあなたは・・・素直・・・なのね
  ・・・素直な感情が一番強いのね・・・」

しのぶ『・・・もし、妬むことがあったとしても・・・
     私は・・・浦島センパイが好きだから・・・
     浦島センパイが私に振り向いてくれなくても・・・
     私が好きでいるから・・・・・・』

?「・・・・・・強いんだね」

しのぶ『・・・私、負けないよ・・・
     負けられない・・・
     なるセンパイがなにをしてても・・・私・・・』



浦島センパイのことが好きだから・・・



?「・・・うん、そうだね
   ・・・・・・私も好きだよ・・・」

しのぶ『・・・・・・好きになっちゃったんだもん・・・
     ・・・やっぱり諦められないよ・・・』

?「・・・・・・やっぱり本心はそうなんだね
  ・・・私は妬みだけの塊・・・
  ・・・・・・そんなことにも気づかなかったなんてね・・・
  ・・・・・・・・・素直じゃなかったから・・・」

しのぶ『・・・でも、あなたが私だから・・・
     私の中のあなたがいてくれたから気づけたんだと思う・・・』

?「・・・妬みがあったから?」

しのぶ『・・・うん
     ・・・・・・なるセンパイみたいな人がいなかったら・・・
     私・・・・・・こんな素直じゃなかったかもしれないんだ・・・』

?「・・・・・・ありがとう
  ・・・私・・・あなたの・・・自分の本心が知れて・・・嬉しかった
  ・・・・・・素直になってもらえて・・・」

しのぶ『・・・・・・・・・・・』

?「・・・私は"妬み"・・・
   人間の感情の一部でしかない・・・
   妬みだから・・・素直になれない・・・
   ・・・だから、妬みのないあなたの本心が知りたかったの・・・」

しのぶ『・・・そうなんだ』

?「・・・普通じゃ・・・会えないから・・・」

しのぶ『・・・やっぱり私・・・ 死んじゃったんだ・・・』

?「・・・・・・確かに今は眠っているかもしれない・・・
   ・・・でも、あなたが進むべき道は・・・あの光じゃない・・・」

しのぶ『・・・私の進む道・・・・・・』

?「・・・私はあなただから・・・
   道を示すことはできない・・・・・・
   ・・・決めるのはあなたなのだから・・・」

しのぶ『・・・・・・決めるのは・・・私・・・』

?「・・・そう、だから・・・あなたと私は・・・共同した考えを持っているはず・・・
   ・・・だから示す必要はない・・・
   そうでしょ?」

しのぶ『・・・・・・うん そうだね
     ・・・さぁ、一緒に行こう』

?「・・・一緒・・・?」

しのぶ『あなたは私・・・でしょ?』

?「・・・・・・・・・・・・・・・・
   ・・・負けたよ・・・素直な君には・・・
   ・・・・・・うん、一緒に行こう・・・・・・」





治療室の扉が開いた

Dr.『・・・残念ですが・・・・・・』


この言葉を聞いた直後、景太郎が治療室に走る・・・


なる『景太郎!!』


その後ろになる、むつみ・・・と続く・・・


景太郎『しのぶちゃん!
     しのぶちゃん!!』


しのぶには薄いシーツがかけられていた・・・


なる『・・・そんな・・・』

むつみ『・・・・・・・・しのぶちゃん・・・』


心電図は・・・波を打っていなかった・・・
・・・ずっとまっすぐ・・・直線の一本線が続いていた・・・


キツネ『・・・・・・・・・・・・・・・』

素子『・・・!?』

スゥ『・・・しのむ・・・?
   しのむ・・・?』

サラ『・・・・・・嘘だろ?
    ・・・おぃ・・・、嘘だよな!?』

はるか(・・・・・・・・・運命・・・か・・・)


・・・そこに しのぶの両親の姿はなかった


友人『・・・ま 前原さん・・・!?』

スゥ『・・・なぁ、しのむ・・・まだ眠っとるん・・・?』

キツネ『・・・・・・スゥ、
     ・・・もう、しのぶは起きんのや・・・
     もう笑ったり泣いたり・・・食べたり・・・飲んだり・・・遊んだりも・・・
     ・・・もう、できへんのや』

スゥ『・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・!?』

素子『し しのぶ・・・』

スゥ『しのむ・・・寝坊やで・・・?
   はよぅ起きや・・・
   しのぶ! 目ぇ覚まし!!』


意味が理解できたスゥの顔は真剣だった・・・


素子『・・・スゥ、静かに・・・』

スゥ『嫌や!
   嫌や!!』


はるか(・・・ん?)


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


はるか(・・・気のせいか・・・?
     死人が動くわけ・・・ないよな・・・)


景太郎『しのぶちゃん!!』

なる『しのぶちゃん!!』

むつみ(・・・・・・・・・・・)


はるか(・・・・・・・・・私の目の錯覚か?
     ・・・気のせいだな、心電図も波打ってないし・・・
     ・・・・・・ん?
     ・・・ちょっと待てよ・・・、もしかして・・・これ・・・)


景太郎『しのぶちゃん!
     死んだら・・・死んじゃったら・・・
     デートができないじゃないか!
     デートの約束はいいの!?』

なる(・・・え・・・?)

むつみ(・・・約束・・・・・・)

景太郎『・・・起きなきゃ・・・できないじゃないか・・・』

むつみ(・・・・・・約束・・・か・・・)


景太郎『・・・どうしても起きないのなら・・・』



景太郎『俺、成瀬川とデートしちゃうよ!?



なる(え"・・・・?)


むつみ(・・・あら?
     ・・・・・・・・・?
     ・・・心電図は・・・・・・心拍数は・・・0・・・・・・?
     ・・・・・・うふふ・・・ なるほど)


なる『ちょっ・・・、景太郎!?』

景太郎『しのぶちゃん!
     目を・・・目を開けて!』

なる(・・・景太郎・・・・・・)


景太郎『しのぶちゃん!!!』


突然、しのぶにかけられていたシーツが飛んだ・・・


CHU・・・


景太郎の唇に何かやわらかいものが重なった・・・

とてもやわらかい・・・唇のような・・・


・・・・・・・・・唇だった


景太郎(・・・・・・え・・・!?)


しのぶ『たまにはこういうのもありですよね』


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

いつのまにかしのぶは起き上がっていた

どうやら景太郎の唇に重なったのは
しのぶの唇のようだ・・・


景太郎『しししし・・・しのぶちゃん!!?』

しのぶ『はい、前原しのぶです』

景太郎『・・・え?
     ・・・・・・えぇ!?』

しのぶ『・・・いけませんか?』

景太郎『いいいいい・・・生きて・・・!?』

しのぶ『・・・生きていてはいけない・・・
     ・・・・・・なんてことはありませんよね?センパイ♪』



・・・緊張がほぐれたのか
この場にいる全員(一部除く)が"へなへな"・・・と力なく座り込んでしまった・・・


キツネ『・・・一体なんなんや・・・、まったく・・・』

しのぶ『心配かけてすみませんでした
     前原しのぶ、復活です』

素子『・・・し しのぶ・・・』

なる『・・・・・・あ ・・・あ・・・』

しのぶ『すみませんなるセンパイ・・・
     もうちょっと驚かすつもりだったんですけど・・・』

なる『ははは・・・はは・・・・はははは・・・』


・・・ツッコミは入らなかった


はるか『・・・やっぱりか』

なる『やっぱりって・・・
    はるかさんわかってたんですか?』

はるか『時々足が動いていただろ?』

なる『そ そうでしたっけ・・・?』

しのぶ『やっぱりずっと同じ体勢なのは辛いですよね・・・
     バレちゃってましたか・・・ テヘヘ』

はるか『それに心電図をよく見てみろ』

なる『・・・?』

はるか『繋がってないだろ』

なる『・・・あ!』


繋がっていないわけだから
心電図が波打つわけがない・・・
・・・ということである


むつみ『なかなかの演技だったわよ、しのぶちゃん』

なる『・・・むつみさん・・・、気づいていたのなら教えてくださいよ・・・』

むつみ『せっかくの演技・・・
     ・・・いえ、1度きりのチャンスを私の一言でなくしてしまってはいけないと思いまして・・・』

なる『・・・はははは・・・はは・・・・・・・ははははははハハハ ハ!!!


キツネ『なるが壊れた!?』

はるか『落ち着け、なる』

なる『ハーーーハハハハハハ
   ホーーホホホホホホホホホホ』

キツネ『誰かなるを止めるんや!!』

素子『・・・こ 腰が抜けて立てませんけど・・・』


一気に緊張が解けてしまったため、腰が抜けてしまったらしい


キツネ『何ィ!?』

サラ『わァァ!
    な なんか振り回してるぞ!?』

キツネ『誰でもいいから止めェェィ!』



スゥ『しのむ、おはよ・・・』

しのぶ『・・・おはよう、カオラ』

スゥ『・・・しのむ、おなか・・・減ってへん?』

しのぶ『・・・・・・、とってもおなかすいちゃった』


・・・しのぶの頬に涙が伝った・・・


しのぶ(みんな心配してくれたんだ・・・私のこと・・・)


スゥ『ウチな・・・』

しのぶ『うん・・・』


しのぶの耳元でスゥがささやいた


スゥ『・・・ウチな、前歯抜けてしもたんや・・・
    ど どないしよ〜・・・?


しのぶ『へ? 前』

スゥ『言うたらアカン!!』

しのぶ『アハハ・・・、どないしよ・・・、って言われても・・・
     ・・・どないする?』

スゥ『はは、しのむ 助けてな』

しのぶ『・・・え!?』

スゥ『・・・ウチ、前歯抜けたやろ・・・
   それ以来手紙がきーへんのや・・・』

しのぶ『・・・そんな 前歯くらいで・・・』

スゥ『それを言うたらアカン!!』

しのぶ『アハハ・・・』

スゥ『あ、せや
   これ、ウチから銘菓が届いたんや
   しのむ、一緒に食お?』


しのぶ『・・・うん』



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

景太郎『・・・い 一体・・・
      結局・・・しのぶちゃんは・・・無事だったのか・・・?』

Dr.『すごい回復力だったよ』

景太郎『で でもさっき・・・"残念ですが・・・"って言いかけてませんでした・・・?』

Dr.『患者さんに頼まれてね はっはっは』

景太郎(今の声・・・どっかで聞いたことがあるような・・・)

はるか『・・・ん?』

Dr.『それはそうと、うまくいってよかったね景太郎クン!』

浦島組『せ 瀬田!?(・・・さん?)』

瀬田『おや、はるかもいたのかい?』

はるか『・・・お前・・・なんでこんなとこに・・・』

瀬田『いやー、パララケルスでの発掘に一息ついたから日本に着たんだけど
    道路で事故ってしまってねー はっはっは』



・・・半径50m内の空気が石化(!?)した・・・


はるか『・・・貴様、今・・・何だと?』

瀬田『え? いや、そこの道でちょっと事故っ』


ドグシャァァ


瀬田『 らーーー


はるか『き きき・・・貴様というやつは・・・!!』

瀬田『イテテ・・・、な 何を怒っているんだい・・・はるか・・・』

はるか『消え失せろ

瀬田『え? 僕・・・何か・・・?』

はるか『消えろぉぉぉ

瀬田『景太郎クン!HELP!! HELP!!
    ・・・Ouch!』


景太郎『・・・そう言われても・・・』


景太郎(っていうか・・・瀬田さん・・・Dr.!?)


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


---そしてひなた荘・・・


景太郎『いくらなんでも回復早すぎだって・・・
     ・・・当日中に退院だなんて・・・
     あんな事故で入院しないのが不思議・・・』

しのぶ『エヘヘ、恋のパワーっていうのでしょうか』

景太郎『・・・恋の?』

しのぶ『はい、センパイとの約束がありましたから』

景太郎『・・・しのぶちゃん・・・
     ・・・・・・そうだね、じゃ デート・・・いつにしようか?』

しのぶ『・・・できれば、早いうちがいいです』

景太郎『う〜ん・・・、明日は東大の入学式だし・・・』

しのぶ『クス、センパイの都合のいい日でいいですよ』

景太郎『そ そう?』

なる『景太郎〜?』

景太郎『あ、どうしたの成瀬川・・・なんか顔が・・・』

なる『なんかさっきからずっと顔がゆがっちゃってるんだけど・・・』

景太郎(あの時壊れたからか・・・)

なる『それはともかく!
    ・・・デート・・・いいわねー?』

景太郎『い いや・・・あの・・・』

しのぶ『羨ましいですか?』

なる『へ!?
    い いや・・・別に・・・どうでもいいけど・・・?』

しのぶ『クス・・・、ならセンパイもらっちゃいますよ?』

景太郎『えェ!?』

なる『・・・・・・・・!?』

しのぶ『いいんですか?』

なる『・・・か 勝手にすれば?景太郎』

しのぶ『じゃ、ありがたくもらいますね』

景太郎『!!?』

なる『・・・ちょ ちょっと景太郎!!』

景太郎『い いや別に俺・・・』

なる『あんたしのぶちゃんに何教えたのよー!?』

景太郎『お 俺は無実だー!』

なる『でも、デートの約束したんでしょ!?』

景太郎『そ そうだけど・・・』

なる『しのぶちゃん・・・キャラが変わちゃったみたいじゃない!』

景太郎『それは知らないー!』

しのぶ『なるセンパイ、"素直"が一番ですよ
     私、なるセンパイには負けませんから!!』


そう言うとしのぶは自分の部屋に戻っていった


なる『・・・・・・素直・・・か』

景太郎『ははは、しのぶちゃんの言うとおりだね』

なる『・・・・・・なんかすっきりしないけど・・・
    ・・・ま、いっか
    デート、がんばりなさいよ』

景太郎『え? が がんばるって・・・?』


『センパーーーイ!』


しのぶの部屋の方から声が聞こえる


景太郎『? しのぶちゃん? どうしたの?』


しのぶ『デート、楽しみにしてますねー!
    私、センパイのこと"好き"ですからーーー!



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

景太郎『・・・へ・・・?』

なる『・・・・・・・・・』

景太郎『い 今・・・なんて言ったんだろう・・・』

なる『肝心なセリフを聞き逃すなぁーーー!』

景太郎『す す す好きって言ってた気がしますーーーーーー』

なる『・・・よろしい』

景太郎『・・・え? な 殴らないの・・・?』

なる『・・・デート、がんばりなさいよ
    くれぐれもしのぶちゃんを泣かせないように・・・!
    いいわね?』

景太郎『は はい・・・』

なる『もっとシャキッと!!』

景太郎『はい!!』






しのぶ『テヘヘ・・・、言っちゃった・・・
     今日だけは・・・わがままさせてくれてありがとう・・・神様』


?「やっぱり素直が一番だね」

しのぶ『そうだね』


周りには誰もいないはずなのに・・・
どこからか聞こえてくる声に対して平然と答えを返す


しのぶ『・・・さぁ、デートにむけてがんばるぞっ!
     しのぶファイトォ!!






・・・・・・・・・・・・・・完


あとがき?


ついに(?)完結!
やっほーい(煩

・・・とはいってもアップしたの4話全部一緒なんですけどね・・・


そして、ここだけやたら長い・・・
2つに分割してもよさそうだけど・・・
分割したくなかったからそのままです(何

ちなみに本来の瀬田さんはDr.ではありません

っていうか、Dr.っぽく見えただけで実際治療したのは別の先生・・・
という裏設定(何)があります
だから、瀬田さんは事故っただけです(それだけ)

妬み・・・
・・・って、あんまり妬みとか・・・てほどじゃなさそうですけど
アニメ版ラブひな(Again版)をちょっくら見たら
「何度も邪魔しました」
って言ってたので・・・(しのぶが)


不幸日本一少女(自称)のわがままもいいんじゃないか・・・
・・・と思いまして書いてみましたが意外に長くなりました

・・・む、なんかむつみさんがかなり母性的になってるぞ・・・?(序盤あたり)
・・・・・・いつもの天然イメージが見事になくなっちゃってますな・・・

・・・でもまぁ、・・・むつみさんですから(何


・・・余談ですが、翌日・・・景太郎はさきほどの病院に入院することになります・・・
・・・・・・詳しくは原作の[HINATA.70]を参照!!
(光るタマネギで・・・)


これ以上長くするのもあれなので(あれ?
最後に・・・

しのぶガンバ!!

・・・と 言ってあげてください




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