アミッドはジェスとしばらくにらみ合っていた。そして先に動いたのはジェスのほうだった。
「こっちから行かせてもらいます。トローン!」
「こっちも負けるか、トローン!」
ジェスのトローンがアミッドに向かっていくが。アミッドも同様にトローンを使い、相殺させた。
「さすが副官と言ったところだな・・・。エルサンダー!}
アミッドが軽く呟き、今度はエルサンダーを使った。
「甘いです。トローン!」
ジェスはアミッドのエルサンダーを回避し、そのままトローンを放ち、アミッドに直撃した。
「くっ・・・負けられるか!トローン!」
アミッドも傷つきながらトローンを放つが、再び避けられた。
「これでとどめです。トローン!」
ジェスのトローンを再度受け、アミッドは倒れた。
(これで・・・俺は死ぬのか・・・)
アミッドはそう思っていると、突然脳裏に1つの言葉がよぎった。
「アミッド、あなたは風使いセティの血を引く者なの」
アミッドが小さい頃、母エスニャから聞いた言葉だった。
「そうだ・・・俺には・・・これがあるんだ」
アミッドは懐から1つの魔道書を取り、立ち上がった。
「まだ立てることが可能なのですね・・・でも、これで終わりにしてあげます。トローン!」
ジェスはアミッドが立ち上がったことに驚いたが、再びトローンを放った。
「俺の中に眠るセティの血よ、力を貸してくれ・・・エルウィンド!」
アミッドの放った風の刃が雷球を切り裂き、ジェスまでも切り裂いた。そして続けざまにトローンを放ち、ジェスに当たった。
「くっ・・・イシュタル様、申し訳ありません・・・」
ジェスはそう言い、崩れ落ち、息絶えた。
「アーサー、悪い。加勢するのは無理だ」
アミッドは小さくそう言い、近くの木にもたれかかった。
アミッドがジェスと対峙していた時、アーサーもイシュタルと対峙していた。
「さすが雷神と言うべきか・・・立っているだけでも明らかに空気が違うな・・・」
アーサーがぼやいた。事実、イシュタルの周りのみ空気が重いのである。
「行くぜ、エルファイアー!」
アミッドが先に攻撃を仕掛けるが、イシュタルはあっさり防いだ。
「今度は私ですね。トローン!」
「なっ!」
イシュタルの放ったトローンを即座に同様の魔法で相殺させようとしたが、あまりの威力にアーサーは避けるしかなかった。
「威力が桁違いだな・・・」
アーサーが呟きながら、今度はトローンを放ったがそれはあっさりとイシュタルに避けられた。
「これで終わりにしてあげるわ・・・」
イシュタルがそう言うと、イシュタルの周りに魔力が渦巻いた。
「トールハンマー・・・神の雷か」
アーサーが呟き、無駄だと思いながらも魔法障壁(マジックシールド)を張った。
「せめて、苦しまずに逝きなさい」
イシュタルのその一言と共に、トールハンマーがアーサーに向かっていった。しかし、神の雷は途中で止められた。
「アーサー、アミッド、突出するな」
アーサーの後ろからシュウの声がした。トールハンマーを止めたのはシュウが斧を投げ、切り裂いたからだ。
「シュウか、助かった」
アーサーは地面に刺さったシュウの斧を引き抜いて渡し、言った。
「あなたがイシュタル王女ですね」
シュウが斧を受け取り、イシュタルに言った。
「ええ、あなたがシュウなのかしら?」
「はい、私が解放軍を率いています。そして・・・」
シュウはそこまで言い、イシュタルに斧を向け、言った。
「ここを通させてもらいますよ」
シュウがそう言った時、突然イシュタルの近くの空間が歪んだ。