92話
「ミトス・・・」
マーテルが言った。
「姉様、やっと目覚めてくれた・・・」
ユグドラシルはミトスの姿の戻りながらそう言った。
「嘘だろ!コレット!」
ロイドが驚きながら叫ぶ。
「ミトス、あなたはなんということをしてきたのですか、私はこの動かぬ体でずっと見てきていました。
あなたがしてきた愚かな行為を・・・。ミトス、忘れてしまったの?
私たちが古の大戦を食い止めたのは、人と、エルフと、狭間の者と、皆、同じように暮らせる世界を夢見たからでしょう」
マーテルはミトスに諭すように言った。
「な、何を言ってるの姉様、せっかく新しい体を用意したのに・・・。そうか、やっぱりそれは気に入らなかったんだね?」
「ミトス、お願いです。私の言葉を聞いて。あなたのしてきたことは間違っています。
少なくとも、私達が共に目指してきた世界とは違います」
マーテルが祈るように手を組んで言った。
「姉様まで、僕を・・・否定するの?・・・違う、姉様がそんなこと言うはずない。はは・・・。ははは、あははははは」
ミトスはやけになりながら手にマナの力を込めた。
「そんなこと、許さないからな!」
そう言って手に込めたマナを暴発させた。
「まったく、くだらないな」
そう言って鎌がどこからか現れ、マーテルに要の紋をつけた。
「な、何をするんだ!」
ミトスが声を荒げながら鎌に言った。
「見ての通りだよ」
鎌がミトスに言った。鎌の奴・・・地で話してるな・・・。
「それに、僕はこの世界の人じゃないし、こんな所で差別をなくしてもしょうがないんだよ」
鎌が剣に手をかけながら言う。
「鎌、戻ってきたか!」
俺が呼んだ。
「もちろん、計画通りに言ってるよ。目的の物も手に入れた。これだ」
鎌はそう言って俺に金属の塊を渡した。アイオニトスって言う名前だったかな?
「さようなら、ミトス。私の最後のお願いです。この歪んだ世界を元に戻して・・・」
要の紋が発揮し始めたのかだんだんコレットの意識が戻り始めながらマーテルが言った。
「嫌だ!姉様、行かないで!」
「こんなことになるのなら・・・エルフはデリス・カーラーンから離れるべきではなかったのかもしれない・・・。
そうしたら、私達のような狭間の者は生れ落ちなかったのに・・・」
マーテルが最後にそう言ってコレットの意識が戻った。
「そうか・・・そうだったんだ・・・。姉様はこんな薄汚い大地を捨てて、デリス・カーラーンへ戻りたかったんだ。
そうだよね、あの星はエルフの血を引く者、すべてにふるさとだものね」
ミトスが呆然と上を見上げながらそう言った。
「分かったよ姉様。こんな薄汚い連中は放っておいて2人で還ろう・・・僕達の本当のふるさと、デリス・カーラーンへ」
そう言ってミトスは両手を広げた。すると大いなる実りがゆっくりと上昇した。
「ロイド、急ぐぞ、早くしないと大いなる実りが失われる!」
鎌が急かすようにロイドに言った。
「ああ、分かった!」
「僕達の邪魔は・・・させない!」
そう言ってミトスはユグドラシルへと変わり。俺達に向かってきた。