89話
「くっ、開かない!」
「俺もダメだ・・・」
俺とロイドが協力して扉をあけるが開かない、こうなったらあの力で行くしかないのかもしれないな・・・。
「翔さん・・・私なら、あそこから入れます」
そう言ってプレセアが通風孔を指した。プレセアなら入れるな・・・。
「分かった。頼むぞ」
「ええ・・・」
プレセアはそう言って蓋を外して中に入っていった。
そして少しして扉が開くとそこには蔓に捕らえられたプレセアと斧の力で何とか下りていない壁があった。
「プレセア!」
「来ちゃ駄目!」
ロイドがプレセアに駆け寄ろうとした所をプレセアが今までに出したことのない大声で叫んだ。
「来ちゃ駄目です。早く行ってください・・・」
「でも、俺には・・・」
「ロイドさんは優しい人です・・・」
プレセアが呟いた。さらに呟く
「でも、優しさに惑わされて判断を誤るなら・・・ただの甘い人です。
あなたには、やるべきことがあるはずです・・・それを、忘れないでください」
「プレセア、ごめん!」
ロイドがそう言ってわずかな隙間を駆け抜けた。俺達も抜ける。最後の俺が抜けた時、斧は壊れ、完全に壁が降りた。
俺はすぐに転送装置を作動させる。
「また罠か!」
ロイドが叫んだ。四方から何やらスライム状の壁が迫ってきた。この壁、人までも溶かすらしいからな・・・。
「こうなったらみんなで一斉に技をかけて壁を壊すぞ!」
ロイドが叫ぶ、ロイドらしいな。
「外れたらみんな死ぬ、だったら一気にやるしかないな」
「いち、にの、さんで行くぞ」
ロイドが俺達に言った。
「よし行くぞ、いち、にの・・・」
「さん!」
声と同時に俺とロイドは技を、奈菜とジーニアスが術をかけて壁の一部が壊れた。俺達は一気に駆け抜ける。
しかし、ジーニアスだけは一歩も動かなかった。
「ジーニアス!」
ロイドが驚いて声を上げる。
「ロイド、早く行って。手遅れにならないうちに・・・」
「馬鹿野郎!お前を置いて行けるかよ!」
ロイドが怒鳴る。
「僕は・・・ロイドと違って臆病なんだ・・・いざとなったら、
体が震えてきちゃって・・・最後に、かっこ悪い所、見せたくないんだ」
ジーニアスが震えながらそう言った。
「ジーニアス・・・」
「行けよ!行けったら!」
「馬鹿野郎!」
ロイドはそう言って転送装置に乗った。俺がすぐに作動させる。