74話

「いい加減にしろ!」

俺が村長に向かって怒鳴った。

「さっきから好き放題言いやがって、テメェは口だけしか能のないクズか!」

「お前みたいな余所者が何を言う!そもそも世界再生が失敗したのはどこの馬の骨とも知れない奴がついて行ったせいじゃないのか?
 薄汚い収容人まで連れてきおって!善良なわしらのような人間に酷い目を合わせよって・・・」

村長がそこまで言ったときまた別の声がした。

「黙れ!お前の何処が善良だ!種族が違うという理由だけでいちいち差別して!そんな色眼鏡は捨てろ!」

鎌だ、地の喋り方で怒っている。多分無意識だろうな・・・。さらに喋り続ける。

「いや、むしろお前を今この場で殺した方がこの村のためになるかもしれないな」

鎌はマナを収束させる。おい、撃つ気かよ!

「そうだ!そいつの言う通りだ!」

どこからか声が上がる。

「ジーニアスは村で一番頭が良いんだよ!」

「ロイドは勉強は出来なかったけど強かったよ!よくダイクさんの所に行く時魔物を追い払ってくれたよ!」

「それにこの2人も村にディザイアンが来た時追い払ってくれたじゃないか?ここの村人でも何でも無いただの通りすがりなのに」

さまざまな声が飛び上がる。

「村長、お前の言葉はあまりにも脆すぎる。村のことを考えるならもっとしっかりと、みんなが納得するような意見を持つことだな」

俺が村長にそう言った。村長は黙ったままだ。

 

「今からダイクの家に向かうのか?」

ロイドがクラトスに聞いた。

「ああ、クルシスの輝石による変化ならエクスフィアを見ているドワーフに頼んだ方がいいだろう」

「そうだな」

そのやりとりを見ながら俺が鎌に話した。

「鎌、お前さっき地が出てたぞ」

「え?」

鎌がうろたえる。一応今自分を偽っているからな。

「まあ幸い誰も気づいてないみたいだ。安心しろ」

俺がそう言って先に進んで行った。とりあえず1人にしてた方がいいな。と奈菜が話しかけてきた。

「翔さん?」

「何だ?」

「さっき鎌さんの口調が変わってましたけど、何かあったのですか?」

奈菜だけ気づいていたか・・・。

「ああ、昔ちょっとな。だけどあまり人の過去を詮索しない方が良いぞ」

「はい、分かりました」

まああいつの過去を知ってるのは俺と鎌位だからな。


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