53話
「ここが雷の神殿か。しいな、大丈夫か?」
俺がしいなに聞いた。
「ああ、何とかやってみるよ」
「さすがに目が痛くなってきたな・・・」
「ええ、ここは暗くなったり明るくなったりと激しいですからね」
「でもあと少しだろ?」
「そうみたいですね。がんばりましょう」
上から俺、鎌、ロイド、奈菜の順だ。暗闇を雷を頼りに進んで行ったりするからな。
「さて、これでいいはずだ」
俺が祭壇の前でそう言った。するとヴォルトが現れた。
「**********」
ん?今俺には普通に聞こえた気がするな?
「まただ!昔と同じだよ!こいつは何を言っているんだ?」
しいながうろたえた。
「待って、私が訳します。・・・えっと、我はミトスとの契約に・・・」
リフィルが所々詰まりながら訳している。そこに奈菜の声が響いた。
「我はミトスとの契約に縛られしもの」
「え?奈菜、あんたヴォルトの声が分かるのかい?」
しいなが奈菜に聞く。
「ええ、何故か分かるのかは分かりませんけど」
「まあいいサ、あたしはしいな、ミトスとの契約を破棄し、新たな契約を交わすことを望む」
「***********」
やっぱり、俺にも普通に聞こえるな。
「えっと、ミトスとの契約は破棄された。しかし私はもう契約を望まない」
「ど、どうして!」
奈菜が通訳した言葉を聞いて、またもしいなはうろたえた。
「***********」
「人と関わりは持たない。だから契約は望まない」
「それじゃあ困るんだよ!」
そう言ってしいなが武器を取り出した。
「しいな、無茶するな!」
ロイドがそう言うが。その時俺達を囲む魔方陣が現れた。
「まずい!みんな、下れ!」
俺がそう言った矢先、魔方陣から雷撃が出た。
俺の忠告で何とか避け切れたのが俺とロイドとゼロス、即座に防護を張った鎌以外はみな弾き飛ばされた。
「みんな!」
しいなは召喚者の素質のせいか、雷撃を受けていても何とか立つことは出来た。
「これじゃああの時と同じじゃないか!」
「しいな!危ない」
しいなの後ろからヴォルトが雷撃を放とうとしていた。俺が急ぐが間に合わない。その時、黄色い影が割って入り、雷撃を受けた。
「コリン!」
しいながコリンに駆け寄り叫ぶ。
「コリン!どうして」
「しいな・・・。ヴォルトは契約者を信じれなくなってるだけ・・・。
ちゃんと誓いを立てて・・・もう一度契約してごらんよ、しいななら・・・出来るよ!」
そう言ってコリンは息を引き取った。
「コリン!」
しいなが叫ぶが、コリンはマナへと帰っていった。
「しいな、コリンの命を無駄にするな!」
俺がヴォルトと対峙しながら言った。
「ああ、コリンのためにも、あたしはヴォルトと契約するよ」