『よし、今日から君は僕の妹だ』


------Story03〜Tsubaki's Episode〜『夢』------


『ありす!』

勢いよく扉を開け、椿と刹那が教室に駆け込む
そこには見知らぬ少女の体を抱えて座り込んでいるありすの姿があった

『・・・お兄ちゃん!』

ありすの表情が明るくなる
頼れる兄が来てくれて安心した・・・といったところだろうか

『俺もいるぜ?』

椿の後ろからひょっこり顔を出す刹那

『あ、せっちゃん』

『「あ」って何だよ・・・』

まるで『今・・・刹那の存在に気づいた』みたいな反応を返されて少し寂しそうな刹那だった

『ところでありす・・・その子は・・・?』

見知らぬ少女に気づいた椿がありすに問いかける
ありすは少し悲しそうな顔で・・・

『咲華・・・ 瑠璃垣咲華
 今日転校してきた子だよ』

『咲華・・・?
 ・・・・・・・・・・・・聞き覚えがあるような・・・ないような・・・』

---・・・・・・この額の傷は・・・どこかで見たことがあるような・・・
  ・・・・・・・・・思い出せない・・・

首をかしげる椿
そんな様子を見てありすは

『覚えてる?
 8年前・・・私とよく遊んでたんだけど・・・』

『8年前・・・  瑠璃垣・・・
 ・・・・・・・・・確かにいたような気がするな
 確か・・・兄がいなかったか・・・?』

『うん いたよ
 名前は・・・・・・・・・・・・』

『・・・・・・・・・・・・・・・』

どうやら二人とも思い出せないらしい
更に首をかしげる椿だった
何かが引っかかって・・・思い出せそうで思い出せない、
といったところだろうか

『そ、そんなことはいいとして・・・
 咲華が・・・・・・!』

『寝てるのか?』

『なんか気を失っちゃったみたいなの・・・
 どうしよう・・・?』

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・

『よっこいせ・・・っと』

『なんだか爺臭いな・・・椿』

ここは保健室
椿は背中に背負っていた咲華をそっとベッドにおろした
おろしただけで寝かせたわけではない

『じゃ・・・あとはお願いします 春希先生』

『はいはい〜☆
 椿君も一緒に居てあげればいいのに・・・』

『・・・・・・他の用事がありますから
 あとは先生とありすに任せます』

『そう・・・  わかったわ
 任せなさい☆』

胸を張る保健教師「春希」
とても元気のいい先生として評判である
その明るさに元気付けられた生徒も少なくはない

『それでは・・・』

椿と刹那が保健室を去ろうとする
すると春希が小さな声で

『気をつけてね・・・』

そう言った

『? はぁ・・・どうも』

悲しそうに言われたので反応に困ってしまった
とりあえず軽く礼をして保健室を去った


夕日に照らされる校舎
そろそろ夕日が沈みそうな時間帯である

『なぁ、刹那・・・』

『んぁ? どした?』

『さっきの男・・・ありすのことを生き残り≠ニ言ってたよな?』

『あぁ、言ってたな』

『・・・・・・あれは何の冗談だ?』

『俺が知るかよ・・・』

『・・・あの男・・・
 また俺達の目の前に・・・現れるだろうな』

『・・・・・・そうだな
 お前を消滅させるとか言ってた気がするが・・・
 お前何したんだ?』

『・・・・・・・・・・・・
 別に思い当たるものはないんだが・・・』

いまいちピンとこなくて首をかしげる椿
さきほどの瑠璃垣咲華の兄のことでも悩んでいたこともあってか・・・少し混乱していた

その刹那・・・「ドゴォォオン」というものすごい音が聞こえた
前方の廊下の壁が破壊されている・・・

『な・・・んだ・・・?』

突然の出来事で驚く椿
しかしさきほどの男に出会ったときほど驚いてはいなかった
男を退かせた時のあの発言が椿を勇気付けていたのだろう
もちろん、刹那もさほど驚いてはいなかった

『椿・・・これってさっきと似てないか?』

『・・・・・・だな
 どうする・・・・・・・・・・・・?』

突然瓦礫の中から真っ黒な生物が飛び出した
動きが速すぎて形が確認できない
ただ、猫と同じくらいの大きさであったことは確かだ

『!!』

真っ黒な生物は椿に突進した
そのまま椿に体当たりを喰らわせ、方向を変えて刹那の方へ飛ぶ
一瞬の出来事で動きを見切れず・・・刹那も体当たりを喰らった

あの小さな外見のわりにはものすごい威力だった
椿の意識が遠くなっていく・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・


『・・・・・・・・・・・・』

---ここは・・・どこだ・・・?
  俺は確か・・・中等部校舎の廊下で・・・何かに突進されて・・・

椿は森の中にいた
森といっても道が開かれているため、歩きやすいようになっている

---・・・ここは・・・森か?
  どこの森だ・・・? 思い出せない・・・
  だが・・・懐かしい感じがするな

過去に来たことがある・・・
そんな感じがした
しかし・・・曖昧なもので実際はどうなのかハッキリしない
来たことがあるとすれば・・・10年ほど前のことなのだろう

---・・・あれは・・・・・・?

ふと・・・椿の視界に三人の人影が見えた
二人は横たわり・・・一人は座り込んでいるようだ
座り込んでいるのはとても小さい子どものように見える

椿はそこへ近づいてみる
足音を潜めているわけではないのだが・・・足音が聞こえない
あと5mほどといったところで椿は信じられないものを目にした

---・・・・・・・・・!?

椿の視界に小さな男の子が見えた
男の子の年齢は5、6歳といったところだろう
椿はその姿に見覚えがあった

---俺・・・なのか・・・?

その男の子は椿の幼い頃の姿にそっくりだった
・・・というか瓜二つ
「本人なのではないか?」というくらいそっくりだった

椿は茂みに隠れ、様子を見ることにした
男の子は座り込んでいる女の子のそばへ近づいてるようだ
それに気づいた女の子が振り返る

---・・・・・・・・・・・・!!

信じられなかった
これは何の冗談なのだろうか・・・?
振り返った女の子は・・・ありすそっくりだった
こちらも「本人なのではないか?」と疑いたくなる・・・

女の子は男の子の顔を見つめ・・・視線を下に落とす
顔を上げるのも辛そうであった

彼女の目には光が灯っていない・・・
まるで放心状態である
そんな様子を見た男の子は女の子に何か話しかけているようだ
離れすぎているせいか会話が聞き取れない

そして女の子は横たわる二人の人間に視線を戻す
相変わらず・・・目に光は灯らない
とても悲しそうで・・・今にも壊れてしまいそうだ

会話が聞こえなかったため椿はもう少し近寄ってみる
本来・・・盗み聞きはいけないことなのだが、
何故か無視できないもので・・・無意識のうちにどんどん近づいていった

『・・・おとうさん、おかあさん』

女の子が微かに呟いた
声に力がこもっていない
彼女の声は震えていた

『・・・・・・君のお父さんとお母さん?』

男の子が問いかける
女の子は小さくうなづき、それきり黙ってしまった

・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・
・・・・・
・・・

わずかな沈黙・・・
椿は大体状況を把握した
横たわっている二人はこの女の子の両親なのではないか、と
その男女は体のいたるところから赤い液体を流し・・・ピクリとも動かない

---まさか・・・死んでいるのか・・・?

そんなことを考えてしまう
しかし・・・・・・呼吸をしている様子も見られない
そしてあの大量出血・・・
とても無事だとは思えない

しかし、姿を現すわけにもいかず・・・椿は見ていることしかできなかった
いや、動けなかった
まるで金縛りにかかってしまったかのように・・・体が反応しなかったのだ

『おとう・・・さん・・・・・・おかあ・・・さん・・・・・・』

父と母の名を呼ぶ女の子
しかし・・・反応してくれるはずがなく・・・沈黙が流れるだけだった
気まずい沈黙に耐えられなかったのか・・・男の子が女の子の方を軽く叩いた

『・・・わかった
 僕の家で引き取ってあげるよ
 これで君は一人じゃなくなる』

突然そんなことを言い出す男の子
引き取る・・・すなわち「養子」という意味だろうか

『よし、今日から君は僕の妹だ』

なんだか無理矢理なことを言っているようだ
仮に両親が亡くなってしまったとしても・・・
いきなり見ず知らずの家に引き取られるなんてこと・・・普通ならありえない

『君の名前は?』

男の子が問う
すると女の子は静かに口を開き・・・

『ありす・・・』

そう名乗った

---・・・ありす!?
  まさか・・・
  そんなことが・・・

信じられるはずがない・・・
これは偶然なのか・・・?
確かに世の中には似た者が三人はいるという
しかしその上同名・・・
・・・偶然は重ならないものだ

つまり・・・これは小さい頃のありすの姿と考えるべきだろう
・・・だが、そうすると時間がおかしい
現在・・・ありすは14歳
しかし・・・この子は4、5歳・・・
どう考えても同一人物とは思えない・・・
しかし、もう一人の男の子が自分・・・
つまり「椿」の幼き姿だと考えればありえない話ではない

・・・まるでタイムマシンで過去に戻ったかのような感覚だ            

『私・・・ありす
 ありす=C.クライン=姫梓原・・・』

---・・・?

椿の眉間にしわが寄る
「ありす=C.クライン=姫梓原」
・・・この名前は一体・・・?
やはりこの子は自分の妹とは別人なのか・・・?

疑問が椿の頭を駆け巡る

『僕は「澤咲 椿」
 よろしくね、ありす』

---・・・・・・・・・!!
  あれは・・・本当に・・・俺・・・だったのか!?

確かに男の子は「澤咲 椿」と名乗った
聞き間違えるはずがない・・・
あれは確かに自分の名前だ

やはりこれは過去の記憶なのだろうか?
こんな記憶が存在したのだろうか・・・?
ありすは自分の妹じゃなかったのか・・・?

いくつもの疑問が浮かんでくる
答えてくれる者はいない
疑問は疑問のまま・・・解決しない

その刹那・・・視界が白い光に包まれた
そのまま・・・何も見えなくなった


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・

目を覚ますとそこは学校の校舎だった
月光に照らされた夜の校舎
破壊された壁の瓦礫が前方の道を塞いでいる・・・
どうやら気を失っていたらしい

椿はわき腹に微かな痛みを感じつつも・・・身を起こし、辺りを見回した
・・・刹那の姿が見当たらない

『刹那・・・?』

どこにも刹那の姿がない
先に帰ってしまったのだろうか?
しかし・・・刹那は椿を見捨てて先に帰るような男ではない
とりあえず椿は刹那の携帯に電話をかけてみた

・・・・・・・・・・・・・・・

「おかけになった電話番号は、現在使われておりません
 番号をお確かめの上、もう一度おかけ直しください」

・・・・・・・・・・・・・・・

『・・・おかしいな
 電源でも切ってるのか・・・?』

何故か電話がつながらなかった
仕方ないので椿は一旦家に帰ることにした
そして、その途中で刹那の家を訪ねよう・・・と

途中、ありすと合流して一緒に帰る
しばらくして刹那の家に着いた
そして・・・訪ねてみたところ・・・
刹那は「まだ帰っていない」とのことだった・・・・・・・・・・・・

To be continued......


Back



SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送