『久しぶりだね・・・せっちゃん』


------Story03〜Setsuna's Episode〜『過去』------


『ありす!』

妹の名を呼びながら勢いよく扉を開ける椿
それに続いて刹那も教室へ駆け込んだ
そこには見知らぬ少女の体を抱えて座り込んでいるありすの姿があった

『・・・お兄ちゃん!』

ありすの表情が明るくなる
頼れる兄が来てくれて安心した・・・といったところだろうか

『俺もいるぜ?』

ひょっこり顔を出す刹那
なんだか忘れられてそうな気がしたので顔を出してみた

『あ、せっちゃん』

『「あ」って何だよ・・・』

まるで『今・・・刹那の存在に気づいた』みたいな反応を返されて少し寂しそうな刹那だった
しかし、彼女の兄「椿」と比べたらそんなものか・・・
そう納得する刹那だった

『ところでありす・・・その子は・・・?』

見知らぬ少女に気づいた椿がありすに問いかける
ありすは少し悲しそうな顔で・・・

『咲華・・・ 瑠璃垣咲華
 今日転校してきた子だよ』

『咲華・・・?
 ・・・・・・・・・・・・聞き覚えがあるような・・・ないような・・・』

刹那には咲華のことがサッパリわからない
過去に会ったという記憶は・・・おそらくないだろう


---そういや過去っていやぁ・・・

何かを思い出し、刹那は天井を見上げる
別に天井を見ているわけではない

--------------------------

『ったく・・・トロイなぁ、お前は』

『あぅ〜・・・せっちゃん待ってぇ〜・・・』

日差しが強い真夏の日
二人の幼き子ども達が公園で駆け回っていた
男の子は元気に駆け回り、
女の子はそれを必死に追いかけている

『しゃぁないなぁ・・・』

男の子が走るのをやめ、その場に止まる
遅れて女の子が追いつき、その場にへたり込む

『はぁ・・・はぁ・・・ ひどいよせっちゃん・・・』

泣きそうになりながら女の子が声を絞り出す

『どうして・・・?
 どうして「このちゃん」って呼んでくれないの・・・?』

泣きそうな顔で男の子を見る女の子

『だ〜か〜ら〜、言っただろ?
 俺を捕まえられたらそう呼んでやるってよ』

からかうように笑う男の子
すると女の子が手を伸ばし・・・男の子の腕をつかんだ

『・・・つ・・・捕まえた・・・よ・・・?せっちゃん・・・』

『な・・・っ おま・・・お前セコイぞ!?』

『エヘヘ・・・ 約束は・・・約束だよ』

女の子の表情が明るくなる
そんな笑顔をされると反論する気になれない
男の子は観念したようにため息をついた

『約束だよ・・・私のこと・・・「このちゃん」って・・・呼んでね・・・ ・・・せっちゃん』

--------------------------

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・

『・・・つな』

『・・・・・・・・・』

『おい、刹那!』

『っと・・・・・・ な、なんだ?どうした?』

突然名前を呼ばれて我に返る刹那

『それはこっちのセリフだ・・・
 いきなりボケ〜っとしてどうしたんだ?』

『・・・俺が?
 ・・・・・・そうか』

どうやら過去のことを思い出してボ〜っとしていたようだ
10年前の・・・夏の日の思い出を・・・

『・・・?
 いつものお前らしくないぞ・・・?』

『ちょっと・・・な
 ところで・・・なんで咲華ちゃんを背負ってるんだ?お前・・・』

『・・・・・・本当にボ〜っとしてたのか・・・』

呆れたようにため息をつく椿
というか、呆れてため息をついている

『この子が気を失ったから・・・
 保健室に運んでるんだ』

『・・・そうか』

『大丈夫?せっちゃん』

心配そうな表情で刹那の顔を覗き込むありす

『あ・・・あぁ・・・』

曖昧な返事を返す刹那

『熱でもあるんじゃないのか?
 お前らしくないぞ・・・刹那』

椿にまで心配されてしまう
刹那は二人を心配させまいと

『な〜に、なんともねぇよ
 俺は丈夫にできてるんだからな』

そう言った

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・

そして、咲華を保健室に寝かせて看病をありすに任せた後、
刹那と椿は保健室を後にした

夕日に照らされる校舎
そろそろ夕日が沈みそうな時間帯である

『なぁ、刹那・・・』

『んぁ? どした?』

『さっきの男・・・ありすのことを生き残り≠ニ言ってたよな?』

『あぁ、言ってたな』

『・・・・・・あれは何の冗談だ?』

『俺が知るかよ・・・』

『・・・あの男・・・
 また俺達の目の前に・・・現れるだろうな』

『・・・・・・そうだな
 お前を消滅させるとか言ってた気がするが・・・
 お前何したんだ?』

『・・・・・・・・・・・・
 別に思い当たるものはないんだが・・・』

いまいちピンとこなくて首をかしげる椿
刹那も同時に首をかしげた
・・・もちろん思い当たることはない

その刹那・・・「ドゴォォオン」というものすごい音が聞こえた
前方の廊下の壁が破壊されている・・・

『な・・・んだ・・・?』

突然の出来事で驚く椿
刹那も同時に驚いたが・・・さきほどの男が出てきたときほどではなかった

『椿・・・これってさっきと似てないか?』

『・・・・・・だな
 どうする・・・・・・・・・・・・?』

突然瓦礫の中から真っ黒な生物が飛び出した
動きが速すぎて形が確認できない
ただ、猫と同じくらいの大きさであったことは確かだ

真っ黒な生物は真っ先に椿に向かって突進した
刹那がそれに気づいた時には遅かった
椿はその場に倒れた

その瞬間・・・腹に激痛が走った
どうやら刹那も真っ黒な生物の突進を喰らってしまったらしい
喰らうまで気づかないほど・・・それだけ真っ黒な生物の動きは速かった
そして・・・ものすごい威力だった

だんだんと意識が遠くなっていく・・・
その時・・・何か体が宙に浮かんだような感覚を感じた
そして・・・そのまま・・・刹那は気を失ってしまうのだった・・・・・・


-------------------------

---「このちゃん」・・・か
  あの子・・・誰だったかな・・・
  思い出せねぇ・・・
  ・・・・・・確か・・・昔一緒に遊んでたような気がするんだが・・・

意識が戻ってくる
そして刹那は目を覚ます

---ここは・・・どこだ?

刹那は見知らぬ場所にいた
光があまり差し込んでこないのか全体的に暗いところだった
地面は・・・どうやらタイルでもコンクリートでもないらしい
雑草のような草が生えている・・・ここは草原なのだろうか

なんとなく・・・「森」に近い雰囲気を持つ場所だった
不思議と心が安らいだ
何故か癒される空間である

『いてて・・・』

刹那はゆっくりと体を起こす
体を動かすと・・・少し腹が痛む

『ちくしょぉ・・・あのまっくろくろすけめ・・・俺の腹にパンチを・・・』

正確には体当たりである
制服のズボンをパンパン、と叩いて刹那は立ち上がる

『さて・・・どうするかな
 なんだってこんなとこにいるんだ・・・俺は』

見ず知らずの場所でむやみに動くわけにもいかず、
腕を組んで考える刹那
むやみに動くわけにもいかないが、動かなくては始まらない
そんな時・・・

『せっちゃん・・・』

聞き慣れない少女の声が聞こえた
刹那が後ろを振り返ると見覚えのない少女が立っていた           
だが・・・どこか懐かしい感覚がする

『誰だ・・・?』

そんな刹那の反応を見て落胆する少女
そして・・・泣き始めてしまった

『お、おい・・・どうした?』

突然目の前で泣かれてしまい、焦る刹那
少女はうつむいたまま顔を上げてくれない
そこで刹那は「せっちゃん」と呼ばれたことを思い出す

『な なぁ・・・その呼び方を知ってるってことは・・・
 俺のことを知ってるのか・・・?』

静かに訊ねる刹那
相手が泣いているのだから静かに訊ねるしかなかった
すると少女は顔を上げて

『私だよ・・・?せっちゃん・・・
 覚えてない・・・?』

そう言った
しかし刹那には覚えがない
見たところ年齢はさほど変わらないように見える
身長は刹那より低い
結構小さいように見える
それは比べる対象が刹那だったからだろうか

『私・・・「秋月木葉」
 わからない・・・?』

『木葉・・・?』

『「このちゃん」・・・覚えてない?
 一度も・・・呼んでくれなかったけど・・・』

それを聞いて何か引っかかる刹那
「このちゃん」という部分に引っかかっているようだ
ついさっき思い出した気がするのだが・・・
何故か今は全く思い出せない
目の前にいる「秋月木葉」はただの他人にしか見えなかった

『久しぶりだね・・・せっちゃん』

嬉しそうに木葉が言った
反面・・・刹那は全く思い出せないまま・・・腕を組んでいるのだった

To be continued......


Back



SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送