『許さない・・・絶対に・・・許さない!!!
 さあ!刀を構えなさい!!』

公園に向かい合う二人の少女
澪は刀を手に取り、クラウスに戦いを申し込む
彼女の瞳には涙が溜まっていた


------Story07〜Claus's Episode〜『追憶』------


『だめ・・・澪 こんなこと・・・』

『うるさい!』

『仮に・・・私が殺してしまったのだとしても・・・
 夏樹師匠は復讐なんて・・・』

『「仮に?」
 どこまでもとぼけるつもりなのね・・・クラウス』

『信じて・・・ お願い、私は・・・何も知らないの・・・』

『・・・・・・もういい』

クラウスの言葉を受け入れない澪
澪は目を閉じて精神を集中させる

ザッ

一瞬澪が動いた
しかし、瞬きをした直後は先ほどと全く同じ状態で立っていた

つーっ・・・

クラウスの頬を一筋の液体が流れ落ちた
それは「赤い涙」と表現できる
つまりクラウスの血だ
しかし・・・赤い涙を流しているのは澪なのかもしれない

『どう・・・?
 私を殺す気になったかしら・・・?
 あなたは・・・兄さんを殺す時・・・同じようにまず頬を斬ったのよ』

クラウスの頬を冷汗が伝う

---澪・・・本気なの・・・?

刀を抜く気になれないクラウス
一年前までクラウスと一緒に修行をしていた澪
年齢に変わりはなかったが当時はクラウスの方が若干上手だったようだ

『次は利き腕である右腕を斬った・・・
 そして左足・・・左腕・・・右足・・・
 とどめに胸を貫いた・・・・・・』

澪の腕が震えている
彼女の感情は「憎しみ」に支配されていた

『そして・・・兄さんは・・・・・・倒れたわ
 酷い出血だった・・・
 すぐにでも駆けつけたかったのに・・・足がすくんで動けなかった・・・』

--------------------------

一年前・・・
澪は道場に向かっていた
その理由は兄が道場へ向かったからである
聞いた話では誰かを呼び出してその人物に会いに行ったのだとか
気になった澪はこっそり道場へ忍び込んだ

『澪・・・帰りましょう
 覗きはよくありません』

もう一人の少女がささやく
名前は「夏樹唯緒」、澪の双子の妹に当たる
澪が心配だった唯緒は澪と一緒に道場に行ったのだ

『・・・兄さんが心配なだけよ
 別に・・・何もしないわ』

『でも・・・覗きはいけません』

『相手の顔を確かめるだけよ
 兄さんが呼び出すくらいなんだから・・・誰なのか怪しいと思わない?』

『プライベートを探ってはいけません』

『で、でも唯緒だって気になるでしょ?』

『それは・・・・・・気になりますけど・・・』

『だから大目に見て
 ・・・・・・相手の顔を確認したらすぐ帰るわ』

・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・
・・・・・・
・・・

刀がぶつかり合うような音が聞こえる
真剣の音だ・・・
普段真剣を使うことは滅多にない・・・
真剣を使用するのには何らかの理由があるはず
澪は急いで音がする方へ向かった
唯緒はペースを変えず、ゆっくり歩いていた

どうやらこの広間から音が聞こえてくるようだ
澪はそっと顔を覗かせた
そこで信じられない光景を目の当たりにする

そこには兄と一人の少女がいた
相手の少女が誰なのかはすぐにわかった
いつも一緒に修行していた人だったから・・・

『クラウス・・・』

その名前を口にする澪
唯緒も静かにその様子を眺めていた

しばらくその戦いを眺めていた
あまりの迫力に足がすくんでしまっていたからだ
いつもの兄と違う・・・
澪はうっすらとそう感じていた
唯緒はどうなのだろう・・・表情に変化はない

すると、突然クラウスが姿を消した
そして兄の頬に赤い液体が伝っていくのが見えた
少し硬直して・・・兄が再び刀を構えたかと思ったら・・・
その刀を握る右腕が斬られた
少量の血が飛んでいた

次の瞬間・・・
血・・・血・・・血・・・
大量の血が飛んだ
あまりの光景に気絶しそうになってしまう澪
そして兄「章仁」は倒れた
血の水たまりと化したその場に・・・

兄の背後に当たる位置に彼を斬った少女が立っている
彼女が刀を落としたかと思うと・・・彼女はしばらく硬直していた
そして・・・刀を拾い上げた途端にその場から走り去ってしまった

澪はただ眺めていることしか出来なかった
恐怖で足がすくんで動かない・・・
一体何があったのかわからない
わかっていることは・・・兄は斬られ、斬ったのはクラウスだということ

唯緒が静かに兄のもとへ歩み寄る
そして兄の脈をはかる
その時・・・唯緒に血がべっとりついてしまった

『澪・・・警察呼んでください』

唯緒が静かにそう言った
その言葉を聞いてハッとなった澪は急いで兄のもとへ向かう

『に、兄さんは・・・!?』

『警察・・・呼んでください
 早く・・・!』

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『うそ・・・ そんなことが・・・』

『これが私の見た事実よ
 唯緒だって・・・一緒に見てた』

---・・・まさか・・・お師匠様と初めて会ったあの日に・・・・・・?

あの日の記憶が綺麗になくなっていたクラウス
この話を聞いても何故か思い出せないままだ
しかし、この日以外に・・・考えられない
返り血を浴びていたのも・・・愛刀「蒼天華」に血痕が残っていたのも・・・

『これで思い出したでしょう?
 あなたが・・・兄さんを殺したのよ』

---そんな・・・私が夏樹師匠を・・・?

『あなたが知らなくても・・・私は知っている!
 この目で見たんだ・・・  間違いない・・・』

『・・・・・・澪』

『さあ・・・刀を取って・・・』

『澪・・・こんなことやめよう・・・?
 復讐なんて・・・・・・』

『うるさい! 私には・・・私にはこうすることしかできないんだ!
 兄を奪われた悲しみを・・・その悲しみから逃げるためにはこうするしかなかったんだ!!』

あの事件が起こるまでは・・・仲がよかったはずの二人
そんな二人がこんな形で再開することになるとは・・・誰が予想できただろうか?

あの日を境に壊れた友情・・・
「友」が「仇」に変わったあの日から澪は憎み続けていた
憎むことしか・・・・・・できなかった
大好きだった兄を奪われてしまったのだから・・・・・・

To be continued......


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