夕焼けの屋上
一つの影が長く伸びる

『水無月・・・クラウス・・・・・・・・・・・・・・・』

その名を呼び、影はその場から消えた

『クラウス・・・
 許さない・・・・・・ 絶対に・・・許さない・・・・・・・・・!』


------Story06〜Claus's Episode〜『仇』------


夕焼けの下校
いつものように三人で歩く

『・・・・・・っ』

いきなり背後を振り替えるクラウス
勢いよく振り返ったので彼女の後ろを歩いていた楓は驚いてしまった

『ど・・・どうかした? 水無月さん・・・』

『あ、あわ・・・っ
 い、いえ、何でも・・・・・・ないです』

赤面するクラウス
キョトンとした目でそんな彼女を見る楓と由真

『なんか・・・寒気を感じて・・・』

『寒気? もしかしてクラちゃん風邪気味?』

『最近疲れ気味みたいだしね、大丈夫?』

『だ、大丈夫です  心配しないでください
 ・・・寒気というよりは視線を感じたんです』

クラウスは辺りを見回す
殺気に近い視線を感じたのだ
「誰かに狙われている・・・?」
冷や汗をかくクラウス

『もしかしてストーカーかな?
 ほら、クラちゃんかわいいし』

『え・・・ そ、そうですか・・・?』

『どちらかといえばユマりんの方が目立ちそうだけどね』

『えぇ〜・・・それどゆこと?
 って・・・やっと「ユマりん」って呼んでくれたね 楓ぴょん』

『呼ばないと脹れるじゃん?』

何気ない会話を交わす三人
しかしクラウスだけはいまいち盛り上がることができなかった
先ほどから殺気を感じたまま・・・その殺気が途切れることはない
強い憎悪を感じる・・・

「クラウス・・・・・・」

『・・・?』

自分の名を呼ぶ声が聞こえた
辺りを見回す
しかし楓と由真以外の人物は見当たらない
二人はまだ会話中のようだ

『私のこと・・・呼びました?』

念のため確認をとっておく
聞こえてきた声は女性の声だ
つまり、楓ではないのがわかる・・・が、念のためである

『いや、呼んでないよ?』

二人ともそう答えた
クラウスは首をかしげる

---気のせい・・・かな?

『クラちゃん?どうかしたの・・・?』

心配そうな顔で由真が覗き込む

『・・・いえ、最近・・・いろいろな人に会うなぁ・・・と思いまして・・・』

『あぁ、あの時言ってた女の人のこと?』

『ええ・・・ まぁ、そんなところです』

『私もやってみたんだけどね〜・・・
 なんか不思議な男の人に会っちゃったよ・・・』

ため息をつく由真

『変な人だった・・・とかじゃないよね?ユマりん』

『い、いや 全然いい人
 名前なんていったっけかなぁ・・・・・・つ・・・つば・・・?』

『つ、ツバ?』

真剣に悩む由真に苦笑いを見せる楓

『つば・・・つば・・・ あ・・・あれ・・・?
 なんでだろ・・・思い出せないや テヘヘ・・・』

イタズラっぽく舌をチロッと出して笑う由真
楓の表情は相変わらず苦笑いのままだった

そしてクラウスは未だに消えぬ殺気が気になって仕方なかった


『それじゃ、また明日』

『そんじゃね〜』

『はい また明日・・・』

しばらくして三人は別れた
この場所が三人の分岐点である
この公園の辺りで別れてそれぞれの道を帰る
それがいつも通りの光景だった

しかしクラウスは家に向かわず、何かに誘われるかのように公園に向かっていた
「ここに行かなければならない」
そんな感じがしたからだろう

・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・
・・・・・・
・・・

カラスが鳴いている
カラスの鳴き声だけが聞こえてくる公園
無言でクラウスは大きな時計の前に立っていた

『・・・・・・私に何か用・・・?』

静かにクラウスが口を開いた
公園には彼女以外の人影はない
しかし、独り言には聞こえないセリフである

すると柔らかな風が吹き、先ほどまではそこにいなかった人物が姿を現した

『・・・澪』

相手の名を口にするクラウス
澪と呼ばれた少女は何も答えなかった
ただクラウスをじっと見つめ・・・黙っていた
彼女からはものすごい憎悪と殺気が放たれている

『どうしたの・・・?
 わざわざこんなところまで・・・私をつけたりなんかして』

『気づいてたの?』

固い表情のまま澪が口を開いた
相変わらず憎悪と殺気は放たれたままだ

『ついさっき・・・ね
 それで・・・何か用があるの?』

『「何か用?」だって・・・?
 ふざけないで・・・』

澪の目つきが鋭くなる

『兄の仇・・・忘れたとは言わせないわ
 一年前のあの日・・・あなたは・・・・・・!』

---兄の仇・・・?一年前・・・?

『夏樹師匠が・・・何か・・・?』

『とぼけないで!
 全てわかってるのよ・・・・・・私は見たんだから・・・
 あなたは・・・私の兄・・・夏樹章仁を殺したのよ!』

『え・・・・・・?』

心当たりがないクラウス
あの日の記憶は未だに戻っていないのだ
ただわかるのは、前の師匠であった章仁は死に、自分は蒼神流を出たということ
「自分が師匠を殺した」
彼女の記憶にそんな記憶は存在しない

『兄さんは死んだわ・・・
 あなたが殺したのだから・・・
 でも・・・異形に殺されたものとして処理されてしまった・・・・・・』

『そんな・・・私・・・殺してなんて・・・』

『私は見ていた!
 あの日のあの瞬間を・・・・・・!!
 兄さんはあなたに斬られて倒れた・・・ 大量の出血と共に・・・ね
 そして・・・二度と起き上がることはなく・・・そのまま帰らぬ人となった・・・』

『そ・・・そんな・・・』

澪は刀を構えた
もちろん真剣である

『刀を構えなさい!
 私は兄さんの仇を討つ・・・そのためにこの一年間、全てを捨てて腕を磨いてきた!!
 クラウス・・・  必ずあなたを倒す・・・いや、殺してやる・・・
 兄と同じ苦しみを味わわせてやる!!』

『み・・・澪・・・落ち着いて』

『許さない・・・絶対に・・・許さない!!!
 さあ!刀を構えなさい!!』

澪の目には涙が溜まっていた
たとえ事実だとしてもクラウスには記憶がない
しかしその事実は真実なのか・・・?
それを知る人物はいなかった
現場を見ていた澪でさえ・・・

一年の時を経て二人は再会した
「復讐」という形で・・・・・・
To be continued......


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