『俺に勝とうなどと思うな
 俺の攻撃を見切ることができない限り・・・勝つことは不可能だ』


------Story04〜Claus's Episode〜『ほとばしる鮮血』------


『僕に勝とうなんて思わないことです
 僕の攻撃を見切ることができない限り・・・勝つことは不可能なのですから』

頭の中でその言葉が何度も再生される
約一週間前に出会った少年・・・「ノンスキル」の言葉である
彼はクラウスを蒼神流に連れ戻そうとしている
そのためにクラウスの前に姿を現した
この一週間・・・彼に会うことはなかったが、彼の件が頭から離れなかった

『・・・・・・前の師匠と同じセリフ・・・』

ボソリと呟くクラウス
空を見上げると雲ひとつない青空が広がっていた
ここ最近はいい天気である

屋上で一人・・・残りの昼休みを過ごす
既に昼食は済ませている

『・・・・・・・・・・・・師匠・・・』

-----一年前-----

『師匠・・・私は旅に出ようと思います』

『・・・旅・・・だと?』

広い道場の中に二人
男女が一人ずついるようだ

『はい
 是非・・・自分の手で奥義「蒼炎の太刀」を修めたいと思いまして・・・』

『・・・ ・・・そうか
 だが・・・それは駄目だ』

冷静に男が答える

『な、何故ですか!?』

『「蒼炎の太刀」は俺が教えてやる
 それで問題ないだろう クラウス』

『ち、違います!
 私自身の手で修得しないと・・・意味がないんです』

『ほぅ・・・?
 どういうことだ?』

『私は今まで師匠にたくさんの技を教わりました
 その技を使いこなせるようになったのは師匠のおかげです
 でも・・・それだけじゃ駄目なんです
 それだけじゃ・・・私は師匠の真似をしただけ・・・』

『つまり・・・自分なりの技を編み出したいわけか?』

『・・・はい!』

『そうか・・・ なら、俺を倒してみろ』

そう言うとクラウスの師匠らしき男は刀に手をかける

『えっ・・・?』

意外な答えに驚きながらも反射的に自分も刀に手をかけるクラウス
師匠らしき男はその姿を確認次第、クラウスに攻撃を仕掛けた

咄嗟に刀を鞘から抜き相手の太刀を防ぐクラウス
「ガキィィィン」といういい音が響き渡る
男は容赦なく攻撃を仕掛ける
クラウスはその攻撃を防ぎ続けるが「このままではいけない」と思い、
クラウスも攻撃態勢に移る

男の攻撃を紙一重でかわすクラウス
そして一瞬の隙をつき技を放つ

・・・しかし、あっさり止められてしまった
男はフンと鼻を鳴らすと

『俺が教えた技で俺を倒せると思っているのか?』

男は攻撃の手を休めることなくクラウスに襲い掛かる
技が通用しないと気づいたクラウスの頭は少々パニックを起こしていた

『俺に勝とうなどと思うな
 俺の攻撃を見切ることができない限り・・・勝つことは不可能だ』

もともと突然襲い掛かってこられたのだ
それだけで驚いてしまうというのに・・・

『どうした?もう終わりか?』

男がクラウスを挑発する

---挑発に乗っちゃいけない・・・!
  冷静に対処しないと・・・
  ・・・でも、師匠を倒すなんて・・・私・・・

クラウスは迷っていた
「自分に師匠を倒すことができるのか?」
「師匠を倒してしまっていいのか?」
そんな迷いがクラウスの攻撃を制限する

そんな様子を察している男は余裕を見せつけるように攻撃をする
倒すか倒されるか・・・
おそらくこの戦いはどちらかが倒れないかぎり終わらないだろう
そしてこれは真剣同士の戦い・・・
敗れた時はさすがに無傷というわけにはいかないだろう
下手をすると殺されてしまうかもしれない

---殺される・・・

命の危機を感じたクラウス
一時的に頭の中が真っ白になる
唯一頭の中に浮かんできた言葉・・・それは・・・・・・

---殺される・・・

クラウスの中で何かが切れる音がした
その刹那・・・クラウスが姿を消す
唐突な展開に男は驚いた
「これは予想外だ・・・」といった表情である
男の頬を冷や汗が流れる

シュッ

その冷や汗を斬るかのように男の頬が斬られた
冷や汗の変わりに赤い液体が頬を流れる
何があったのか・・・わからない
クラウスの姿は見えない
この攻撃はどこからきたのか?

しかし今現在ここにいるのは男とクラウスの二人だけだ
外部からの攻撃でないとすればクラウスの攻撃としか考えられないだろう
師匠であるはずの男が弟子の攻撃を見切ることができない

『こんなこと・・・まぐれでしかない』

男は舌打ちをしながら再び刀を構えた
構えたその瞬間・・・

ピッ

何かが飛んだように見えた
それは床に落ち赤黒いシミをつくる

血だ
それは少量ではあったが確実に血だった
しかも・・・男の血である
気づけば利き腕である右腕が斬られていた
痛みすら感じなかった
斬られた瞬間でさえ何が起こったのかわからなかったのだ
男はだんだん混乱してきた

とても自分の弟子の攻撃とは思えない
それも基礎から全部自分が教え込んで叩き込んだものであるというのに・・・
それが見切れない
「俺が・・・負ける・・・?」
男の頭をそんな言葉が駆けていった

男の動きが止まる
その瞬間・・・男の目には狂った弟子の顔が見えた

・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・
・・・・・・
・・・

一瞬だった・・・
男はその場にガクンと膝をつき・・・倒れた
男の背後に当たる位置に少女の姿があった
自分の師匠を斬ったクラウスの姿だった

彼女の表情は正気ではなかった
その瞳は血のように真っ赤に染まり・・・全身に返り血を浴びていた            
鮮血のついた愛刀「蒼天華」を鞘に戻そうとする
その時だった
蒼天華が手から滑り落ちクラウスの動きがピタリと止まった

そして彼女はゆっくりと背後を振り返った
背後には何も見えない
視線を下に持っていく
そこには・・・ついさっきまで余裕な姿を見せていた自分の師匠が倒れていた
そして床には大量の赤い液体が流れている

クラウスの瞳はもとの黒い色を取り戻していた
頬を冷や汗が流れ落ちる
手が震えている・・・
足がすくんで動けない・・・
自分がやったのに・・・その状況が理解できなかった

「殺される・・・」
そう感じた時・・・勝手に体が動いた
その時のことはほとんど覚えていない
覚えているのは・・・何かを斬った感覚だけだ
その何かとは・・・言うまでもなく自分の師匠のことだろう

血の匂いが漂っている
全身を震え上がらせる匂いだ
それは気を狂わせるような匂いだ
怖くなったクラウスは・・・愛刀を片手に・・・その場から走り去った
全身に返り血を浴びたまま・・・走った
周りの目を気にせず・・・ただ走り続けた

どこまでも・・・どこまでも走り続けた
当てもなく走った
自分が今何をすべきなのかわからなかった
走って逃げることが正しいと判断したわけではない
ただ・・・・・・怖かった
どうすればいいかわからなかった
どうしようもなくて・・・ただ走った
力尽きるまで・・・
足が壊れてしまうくらいに・・・
どこまでも・・・走り続けた

足が悲鳴を上げている
だが止まることができない
もう何も考えられなかった
何も考えずに・・・走っていた
彼女の意識は薄れかかっていた

ガッ

小さな石に躓いて全身が空を飛んだ
一瞬だがその体は宙にあった
そして・・・その体は地に落ちた
「ドサァ」という派手な効果音が聞こえる

うつぶせに倒れた彼女はそのまま動かなくなった
呼吸をしているのかどうかさえ怪しいくらい・・・ピクリとも動かなくなってしまった
その辺りに人気は全くない
クラウスが助かる確率はゼロに近かった
既に彼女の意識は完全になくなってしまっていた・・・・・・

To be continued......


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