『私にはこの「蒼天華」がある・・・
 決して・・・負けたりしません!』


------Story02〜Claus's Episode〜『勇気』------


小鳥のさえずりが聞こえてくる朝
本日は良い天気だった
春を感じさせる晴天の日だ

大きな木の下に一人の少女がちょこんと座っていた
彼女はボ〜っと空を見上げているだけで何もしていない
手元に大きな細長い棒のようなものがあるだけである

『ふぁ〜・・・』

大きなあくびをする
寝不足なのか目の下にクマまでできてしまっている
コックリコックリと頭が動く
今すぐにでも眠ってしまいそうだ

---いい天気・・・
  気持ちいい・・・
  絶好のお昼寝日和・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・
・・・・・・
・・・

『・・・さん』

・・・・・・

『・・・づきさん』

・・・・・・

『水無月さん!』

『ふぇっ!?』

突然名前を呼ばれて目を覚ます少女「水無月クラウス」
とても寝心地がよかったのかよだれが出てしまっていた

『はぅっ・・・お、お師匠様!』

クラウスの視線の先には「師匠」と呼ばれた少年「音霧 楓」の姿があった

『気持ちよく眠れた?』

からかうように楓が問いかける

『あ・・・ や、やだ・・・私ってば・・・』

『ハハハ・・・
 仕方ないよ  昨日は大変だったもんね』

『あ、あれ・・・?
 今何時ですかー・・・?』

いつの間にか辺りがオレンジ色に染まっていることに気づいた
影が長く伸びている

---ま、まさか・・・

クラウスは冷や汗をかいた
まさか・・・今は・・・

『ん、今は午後3:50くらいかな
 もう放課後だよ』

『・・・えぇ!?』

夕日が眩しく照り付けていた
どうやらクラウスは8時間も眠ってしまったようだ

『なかなか教室に来ないと思ったら・・・まさか寝てたとはね・・・』

苦笑いする楓
クラウスは恥ずかしくて顔を伏せてしまった

『まぁ・・・昨日はあんな時間につき合わせちゃって・・・ゴメン』

『い、いえ・・・そんな・・・』

・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・
・・・

少しばかりの沈黙
とても静かである
寝るにはちょうど良さそうである

『そういえば・・・最近気づいたんだけど・・・』

楓が話題を提供するように口を開いた
クラウスは少し顔を上げて反応する

『・・・異形の者が増えてきたような気がするんだ』

真面目な表情でそう言った
深刻な空気が辺りを包む

『異形の者が集まることなんてそうそうあることじゃない
 考えられる理由は「成仏したいから光≠フあるところへ集まる」くらい・・・』

『その光≠ヘ電気ではなく・・・魔法の類の光≠ナしたよね』

『そう・・・
 つまり、このあたりに光≠司る使い手がいるはず・・・』

『光≠持つ人は・・・もう存在しなかったんじゃなかったんですか・・・?』

『うん・・・・・・あの一族は滅んだはずだった
 10年前をきっかけに・・・ね
 でも・・・もしかしたら生き残り≠ェいたのかもしれない』

辺りが暗くなってくる
そんなことは気にせず、楓は話を続けた

『実は・・・以前から怪しいと思っていた人物が一人いるんだ』

『だ・・・誰ですか? それは・・・』

『中等部3-B組・・・澤咲ありす・・・』

辺りがシン・・・と静まった
いつの間にかあたり一面が真っ暗になっている
しかし、時計の針はまだPM4:00を指している

『異形か・・・?
 いや・・・違う・・・  この気配は・・・?』


『さすが音霧家の子息だけはあるわね
 私とあの子達の気配を見分けるなんて』


どこからか女性の声が聞こえた
どこから聞こえてくるかはわからない
声が反射して響いて聞こえるからだ
まるで・・・小さな体育館にいるような感じである
そう・・・・・・ここが小さな異空間であるかのような・・・
そんな感じである

辺りは黒い霧のような闇に包まれ
何も見えない状態だ
唯一確認できるのが、自分の姿と自分のすぐ近くにいる少年(少女)の姿だけだ

『ふふふ・・・恐いのかしら?』

女性は笑いながらそんなことを言った
闇の中から聞こえてくる声はとても不気味である
別に女性の声が不気味なわけではない
暗闇という空間が恐怖を増幅させているのである

『お師匠様・・・・・・』

『落ち着いて、闇に飲まれないように・・・』

不安そうな表情を見せるクラウス
そんな彼女を落ち着かせる楓
しかし・・・何度か異形と戦ったことはあるが、
こんな状況に遭遇したのは初めてだ
とても落ち着けるものではない
楓もそんな状況に焦っていた

『大丈夫・・・ いつも通りにやれば・・・問題ない』

楓がそう囁いた
「問題ない」と言いつつ、彼は冷や汗をかいていた

『ふふ・・・カッコつけちゃって・・・』

『う・・・・・・』

どうやら図星だったらしい
楓は更に冷や汗をかいた

『ところで・・・そちらの彼女は何者かしら?』

ピクッとクラウスが反応する
彼女の顔にも冷や汗が見られる

微かな足音が近づいてくる
北西の方角から聞こえてくる
おそらく謎の声の主の足音だろう
しかし、姿は見えない

『誰なの?あなた』

『!?』

クラウスのすぐ後ろで声がした
「背後に誰かがいる・・・!」
しかし恐くて振り向けない・・・

おかしい・・・足音は北西の方角から聞こえてきたはず・・・
自分達は北の方角を向いていたはずだ
それなのに・・・気配も感じさせることなく背後に回りこまれた・・・
しかも・・・一瞬で

『音霧の血筋じゃないようだけど・・・
 ・・・変な力を感じるのよね
 ただの友達・・・ってわけでもないんでしょ?』

『水無月さんは一般の生徒だ・・・
 だから・・・』

『ふふ・・・ 見え透いた嘘なんかついちゃって・・・
 知ってるのよ・・・ 昨晩・・・私の『影』がその娘に斬られた・・・ってね』

『!』

確かに昨晩・・・クラウスは、Evil Spiritシャドゥ≠フリーダー格を斬った
見事なまでに真っ二つに・・・

---何なの・・・?
  この人・・・・・・

だんだん恐くなってきたクラウス
声しか聞こえないが、あの女性が敵であることは確かだ
「逃げちゃダメ・・・」
そう自分に言い聞かせる

『まぁいいわ
 私は・・・他に用があってきたのよ』

『用・・・?』

女性はクラウスの真後ろで話す
クラウスは振り返らないまま答える
やはり恐くて振り向けないのだ

『凪から・・・生き残り≠フ関係者を潰すように・・・ってね』

『凪・・・?生き残り・・・?』

2つの疑問が浮かんだ
「凪」とはこの女性の関係者だろうか?

『・・・今入った連絡によると、生き残り≠フ名前は「澤咲ありす」だそうね』

生き残り・・・そして「澤咲ありす」・・・?
ふと、さきほどの楓の発言を思い出した

---まさか・・・
  お師匠様がさっき言ってた・・・生き残り≠チて・・・
  その「澤咲ありす」って人のことなの・・・?
  お師匠様は・・・そう感付いていた・・・?

『そういうわけだから、許してね?』

背後からものすごい殺気を感じた
「逃げなきゃ・・・!」
さっきとは違い、第六感がそう告げている
この状況は・・・確実にまずい

『ちょっと待ってくれ・・・』

楓が口を挟む

『僕達は・・・「ありす」って人の関係者じゃない
 ただ名前を知っていただけ・・・
 会話したことすらない』

『でも・・・「ありす」が何者なのか感付かれると面倒なのよ
 しかもあなた・・・音霧の血筋だしね
 悪いけど・・・消えてくれるかしら?』

女性の顔が見えた
女性の右手から赤い光が発されている
その光で幽かに顔が見えた
鋭い目でこちらを見ている
下手をすれば・・・その場でクラウスを殺ってしまいそうなくらいに・・・・・・            

『大丈夫  後処理は凪に任せてるし・・・
 たいして問題ないわ
 だから・・・・・・安心して逝って・・・』

赤い光が強くなる
女性は右手を高く上げ・・・同時に左手も上げる
両手で赤い光を支えているようだ

『さよなら・・・』

その刹那・・・

「斬!」

赤い光が真っ二つに切れた
赤い光は右と左・・・それぞれに飛び散り、爆発した
つまり、正面方向または後方から斬られたことになる

『な・・・!?』

予想外の展開に焦る女性
よく見れば目の前にいたはずのクラウスがいなくなっている
つまり・・・赤い光を斬り裂いたのは・・・

『お・・・お師匠様に・・・攻撃はさせません!』

愛刀「蒼天華」を構えたクラウスが前方に存在した
目の前ではなく・・・3mほど距離が開いている

『! ・・・まさか』

何かに気づいたのか女性が冷や汗をかいた
さきほど感じた殺気はなくなり・・・
威圧感も弱くなっていた

逆に・・・クラウスの気が強くなっていた
ついさっきまで恐怖に取り込まれそうだった彼女が・・・
その恐怖を包み込んでしまったかのようだ

『水無月さん・・・』

あっけに取られたかのように楓がクラウスの姿を見つめる
一瞬の出来事に驚いてしまったようだ

『あ・・・あなた・・・蒼神流の・・・?
 ・・・でもあなた・・・状況がわかってるの・・・?』

『どうせやられるのなら・・・やられる前にやるまでです!』

『あなたに勝ち目なんてないわ・・・』

『私にはこの「蒼天華」がある・・・
 決して・・・負けたりしません!』

クラウスから強いオーラが発されている
この空間の闇全てを飲み込んでしまいそうな・・・強いオーラが

『・・・っ
 私のオーラより強いというの・・・?
 そんな・・・ありえない・・・』

女性が後ずさる
右手からは弱弱しい赤い光が発されていた

『くっ・・・ 力が出ない・・・!?』

『そちらから来ないのなら・・・
 こちらから行きます!』

クラウスの姿勢が低くなる
周りの空気が張り詰める
まるで空気が凍りついたかのように・・・

『っ!
 仕方ない・・・こうなったら・・・』


『やめろ如月!』


どこからか男性の声が聞こえた
声が聞こえたかと思うと・・・突然女性の前にフードで身を包んだ男が現れた

『な・・・凪!』

『状況を冷静に見ろ
 お前に勝ち目はない・・・』

『!? そ、そんな・・・ありえないわ!』

『如月・・・いくらお前が作ったエリアの中でも・・・
 それが飲み込まれているのでは圧倒的に不利・・・
 ここは退くべきだ』

冷静に「凪」と呼ばれた男性が警告を告げた
しかし「如月」と呼ばれた女性は納得がいかないようだ

『退くなんて・・・主義に反するわ』


『命を粗末にするな  如月』


もう一人・・・謎の男が現れる
こちらの方はフードはかぶっていないものの顔がよく見えない

『一閃まで・・・』

『今日は日が悪い
 だから・・・我も凪も退いてきた』

静かに「一閃」と呼ばれた男が言う

『・・・・・・まさか・・・そんな・・・』

『ま、そういうわけだ
 退くぞ如月』

『・・・・・・・・・・・・フン』

そして凪を先頭に3人は姿を消した
黒い霧が晴れてゆく・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・
・・・

わずかな沈黙
そしてクラウスはへなへなと座り込んでしまった

『・・・ ・・・ ・・・た、助かった・・・?』

『み、水無月さん・・・』

『お師匠・・・様・・・』

クラウスは涙目だった
無理をしていたのだろう
安心して力が出なくなってしまったようだ

『・・・・・・助かったよ
 ありがとう・・・水無月さん
 ・・・ ・・・借りを作ってしまった・・・』

『・・・お師匠様が無事で・・・よかった』

『水無月さん・・・
 水無月さんこそ大丈夫・・・?』

『ハハ・・・ハ・・・ 力が入らないんです・・・
 なんだか・・・立てなくて・・・』

『・・・ホント・・・助かったよ
 女の子に命を救われるなんてね・・・
 僕はなんてたよりないんだ・・・』

『そんなことありませんよ
 お師匠様は・・・私の命を救ってくれたんですから・・・・・・』

夕日に照らされる中庭
大きな木の下に少年と少女が一人ずつ・・・
そして・・・・・・茂みに一人・・・少年が隠れているのだった

その少年が少女「クラウス」を追ってきた使者だということは・・・
クラウス本人はまだ知らない・・・・・・

To be continued......


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