虫の音が響く静かな夜
冷たい夜風が頬をなでる
時計の針が0:15を指している
野良犬一匹すら存在しない暗闇の公園
そこに二人の男女の姿があった


------Story01〜Claus's Episode〜『暗闇の悪霊』------


『前方20m先に3体
 動く気配はありません』

少女の方が情報だけを速やかに伝える
その少女は「蒼天華」と彫られた野太刀を構え、
目を閉じたまま、心を研ぎ澄ませているようだ

『・・・もう1体は?』

『・・・気配を消しているせいか具体的な位置が感じ取れません
 半径5m以内に存在するのは確かなのですが・・・』

目を開き・・・冷や汗を流す少女
そんな彼女とは逆に少年の方は「なんともない」といった表情である

『・・・なら「東」・・・か
 水無月さん 西の方角を向いて構えてて』

何を考えたのか「東」と呟きつつ「西を向け」といった指示を出す少年

『西・・・ですか?』

『そう 西』

『了解しました』

(お師匠様・・・一体何を考えているんだろう・・・?)

---これは何かの作戦なのだろうか?
  「相手は東から来る」と察知したのではないのか?
  ならば東の方角に攻撃すべきだろう
  それなのに反対の西の方角に構えて意味はあるのだろうか?
  全く作戦が読めない・・・

そう思いつつも、少女「水無月」は指示通り西を向き「蒼天華」を構える
静かに目を閉じる
気配で相手の動きを察知するつもりらしい

少年の方は東を向き、目を閉じたまま聞き取りにくい言葉をブツブツ呟いている

「ズバァッ」

一瞬だった
少年が目を開いたかと思うと突然袖口からナイフを出し
そのまま右手方向に振り払った
その瞬間・・・見えない衝撃波が発生した

しかし、何もない空中をナイフで切りつけても意味はない
敵に攻撃するタイミングを見誤ってしまったのだろうか
すると少年は

『水無月さん!影を!』

突然そんなことを叫んだ
少女水無月はその言葉を理解するまでに2、3秒かかったが、
理解次第行動に移った
不思議なことに水無月の足元には2つの影がある
そう、水無月以外の影があるのだ

それは少年の影ではない
少年と水無月の間の距離はそこそこ開いている
もちろん少年の足元にはちゃんと少年の影がある

---その影は一体誰のものなのだろう?---

疑問を浮かべる水無月だったが、今は行動の時
「蒼天華」に手をかけ、目にも留まらぬ速さで抜刀した
あの大きな刀を簡単に鞘から引き抜いたのだ

それと同時に地面が真っ二つに裂けた
水無月の前方5m
その距離にある地面が切り裂かれていた
そして・・・謎の影も真っ二つに切り裂かれていた
影であるはずなのに・・・確実に切り裂かれている

『と・・・とった?』

刀を鞘に収め、辺りを確認する
切り裂かれた影はその場から消滅していた

『お疲れ様 水無月さん』

『お師匠様・・・』

まるで何事もなかったかのように声をかける少年
そこで水無月は気になっていたことを一つ・・・質問してみた             

『あの・・・お師匠様
 今のは一体・・・?』

『「シャドゥ」と呼ばれるEvil spirit
 その名の通り影の悪霊
 なんらかのトラブルで成仏し損ねた亡霊さ』

『なぜ・・・人を襲ったりするのでしょうか・・・』

『シャドゥには実体がない
 そしてシャドゥは相手と反対の思考を持って行動する
 つまり、こちらに敵対意識がないということはシャドゥ側に敵対意識を持っている、ということなんだ』

『???』

いまいち理解できずに頭を抱える水無月
疲労がたまっているせいか頭の回転がよろしくないようだ

『ん〜・・・
 つまり僕が『やらない』と考えるとシャドゥは『やろう』と考えるようになり
 逆に僕が『やろう』と考えるとシャドゥは『やらない』と考えるようになる
 天邪鬼的な思考だよ』

『へぇ・・・ そうなんですか』

『まぁ、今回は例外だけどね
 こちらから攻撃を仕掛ければさすがに相手(シャドゥ)も反撃してくる』

いろいろ説明してくれてはいるのだが、
睡魔まで襲ってきた水無月の頭にはほとんど入っていない
納得してうなずいているのか、単純に眠いのか・・・
こっくりこっくり頭が動く水無月だった

『・・・で、さっきのは僕が「東」に向かって攻撃しようとしたから
 相手は「西」から攻撃しようと考える
 そういうわけで水無月さんに西向きに構えてもらったんだ』

『・・・そういうことだったんですか』

『さすがに自分が「攻撃される」って時に
 「攻撃しない」または「逃げる」と考えたりはしなかったみたい
 シャドゥの思考は完全に逆のことを考えているわけでもないみたいだ』

『あ・・・・・・!』

ここであることを思い出す水無月

『お師匠様!まだ3体残って・・・』

『あ〜・・・ 大丈夫
 さっきの衝撃波でやっといたから』

あっさりと答える少年
いつの間にそんな戦略を立てていたのだろう
ゲームで言えば1ターンで戦闘が終了したようなものだ

---一体どうやって・・・?---

今日の水無月の頭の中は疑問符だらけだった・・・・・・

『さ、今回はこの辺にしてお開きにしようか』

『・・・・・・・・・』

『?』

『え?あ は はい
 お疲れ様でした』

『んじゃ、おやすみ』

『はい おやすみなさい』

こうして少年と少女は別々の方向へ向かって歩き出した

少年「音霧 楓」
少女「水無月クラウス」

普通とは明らかに違う能力を持つこの二人は
後に起こる「ある事件」に巻き込まれることになる・・・

To be continued......


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