『ん・・・ ・・・ ・・・っ』

ありすの様子がおかしい
彼女の異変に気づいた咲華は急いで彼女のもとに駆け寄る

『ありす!どうしたの・・・?』

『ん・・・何でも・・・ないよ
 ちょっと・・・苦しい・・・だけ』

ありすが苦しんでるこの時にマリアは黙って目を閉じていた

『ちょっとマリア!
 ありすが・・・・・・・・・!』

『しっ! 静かにして・・・・・・』

『こんな時に何を・・・!』

『・・・何か来てる
 咲華・・・ありすを・・・背負っていけるか・・・?』

『え・・・?』

『・・・とにかく早く・・・!』


------Story10〜Alice&Claus's Episode〜『光る風』------


咲華がありすを背負って走る
咲華の前を走っているのはマリアーヌである

『ねぇマリア・・・』

『・・・・・・ありすを背負えて満足か・・・?』

『え? い・・・いやそういうことじゃなくて!!』

『何か・・・不吉な気配が近づいている・・・
 そして・・・・・・ありすに何かが起こっている・・・』

『何か・・・?』

相変わらずポーカーフェイスのマリアーヌに焦る表情の咲華
「とにかく今は走るしかない」
二人はどこまでも走り続けた
ありすの状態を回復させなければならない
そして・・・今・・・敵の攻撃を受けるわけにはいかない
自分たちを追ってきているのは敵なんだ、と確信した咲華とマリアーヌ

『気配は三人・・・ どれも強力・・・
 ・・・・・・逃げ切れるだろうか』

『・・・つべこべ言わず・・・逃げるしかないでしょ?』

『気になるのは・・・
 この気配・・・ ・・・さっきの三人とは違う・・・』

『・・・やっぱりそう?
 私もそんな感じがしてたわ』

『・・・言われるまで・・・気づかなかったくせに・・・・・・』

ボソリとマリアーヌが呟いた
咲華の耳には入らなかったが何故だか苛立ちを感じる咲華だった


---Claus-side---

『ん?どうしたの楓ぴょん』

突然立ち止まって考え込む楓
そんな様子を不思議に思った由真が尋ねた

『ちょっと待って・・・何か来てる』

『さっきの女の子?』

『いや・・・だからちょっと待って・・・』

『じゃ男の子?』

『待ってって・・・』

『オカマぁ?』

『待てって!』

『楓ぴょんが怒ったー・・・』

『あはは・・・お師匠様考え込んでるみたいですから・・・少しそっとしておいてあげてください 由真さん』

『・・・はぁい』

しばらく考え込んでいる楓
気まずい沈黙が漂う
・・・が、由真はそこら辺を珍しそうに眺めていて、その様子を眺めているだけで意外と退屈しないクラウスだった

『・・・あの時と同じ気配だ
 「如月」・・・だったかな・・・』

『・・・如月さん・・・ですか』

『誰なの?楓ぴょんの元カノ?』

真剣な様子の二人にのほほんとした由真

『以前お話しましたよね
 ・・・中庭で女の人に襲われた、って
 その人です』

『へぇ〜へぇ〜』

やはり由真はのほほんとしている
どういう事態なのかわからないのだから仕方ないのかもしれないが

『! 二人とも気をつけて!』

『わっ!?』

「ドゴォォォン」という派手な爆発音と共に近くに生えていた並木が燃え上がった
いつかと同じようにあたり一面・・・黒い霧に包まれている

『ふふ・・・久しぶりね』

『・・・!』

闇の中から女性が姿を現した
不気味な笑みを浮かべてクラウスの目の前に立ちはだかる

『・・・今度は油断するなよ?如月』

如月の後ろから男性が現れた

『言われなくてもわかってるわよ・・・凪』

『ふ・・・ やっぱ戦闘のときは性格が変わるな・・・お前』

『五月蝿いわね・・・』

いきなり二人も目の前にして楓は焦っていた
「どうする・・・?」
黙って最善の対処法を考えるがなかなか浮かんでこない

『うわぁ・・・なになに?
 これ映画の撮影??
 すごいね〜』

この状況でものほほんとしている由真
ある意味素晴らしい

『・・・ん? お嬢さん何か勘違いしてないかい?
 これは映画なんかじゃないんだぜ?』

『・・・んん? どゆこと?おじ・・・』

『お兄さんだ! ・・・たく、俺はまだ老けてないぞ・・・』

『あはは、冗談だよじょーだん』

仮にも相手は敵だというのに普通に接している由真
楓とクラウスは驚くばかりだった
「ある意味凄い・・・」と

『水無月さん・・・今のうちに・・・なんとか逃げられないかな?』

『! お、お師匠様・・・!由真さんを見捨てるんですか・・・!?』

『いや、あの二人の狙いは間違いなく僕達だ
 多分・・・ユマりんに危害は加えないと思う』

『・・・わかりました  お師匠様を信じます』

そして二人は南の方角へ駆け出した

『! 逃げたわ!』

『んなの見りゃわかる!
 追うぞ!如月!』

『言われなくても追うわよ!』

凪と如月も二人を追って駆け出した
その場には由真だけがポツンと取り残された

『・・・ ・・・ ・・・なんだいなんだい
 みんなしてぼくをおいていってさ』

機嫌が悪くなってしまったようだ
すると由真は何を考えたのかふと携帯電話を取り出した

『さて・・・ただ事じゃなさそうだし警察に連絡入れておこうかな
 ・・・・・・木が燃えて・・・ある意味火事だし』

そして由真はボタンを押すのだった


---Alice-side-

『・・・! 前方から敵が・・・』

『そ、そんな!?
 後ろからも来てるっていうのに・・・』

ひたすら走る咲華とマリアーヌ
咲華はありすを背負っているせいかいまいちスピードが出せない

『・・・おかしい  後方からの気配が・・・薄くなっている・・・
 ・・・・・・どうやら追いかけてきてるのは一人だけみたい・・・』

『・・・前からは?』

『・・・四人
 手前の二人は・・・問題ない  更に遠くにいる二人は・・・殺気を放っている』

『・・・どうする?』

『・・・ ・・・・・・後方へ強行突破』

『やっぱそうなるのね・・・
 まぁ、一本道なんだから仕方ないんだけど・・・』

『ん・・・ ・・・ ・・・っ』

『ありす・・・大丈夫?』

『はぁ・・・はぁ・・・』

『・・・急ごう 咲華』

『うん』


---Claus-side-

『しつこいな・・・!』

『お師匠様・・・前に人が』

『あれは・・・光魔法の』

『・・・・・・どうします?』

『・・・どうやら彼女達も追われてるらしいな
 合流しよう・・・・・・ 背負われている金髪のあの人・・・
 ・・・もしかしたら・・・』

『・・・? とりあえず・・・合流ですね  わかりました』

『ってあの人たち方向転換しちゃったよ!』

『・・・お、追いましょう!とりあえず』

楓が呪文を唱えると二人の走る速度が上昇した
どうやら風魔法を利用しているらしい

遠くからパトカーのサイレンが聞こえてきた
どうやら由真が呼んだパトカーらしい

『!? なんだってサツが来てやがるんだ!?』

『あたしに聞かないでよ!』

『くそ・・・面倒だな
 追跡は任せたぞ如月!』

『・・・わかったわ』

凪は方向を変えパトカーのほうへ向かって走り出した
数分後・・・パトカーのサイレンが途絶えてしまったようだ


---Alice-side-

『はぁっ・・・・はぁっ・・・
 ま、待ってマリア・・・』

息を切らして声を絞り出す咲華
そんな様子を見て足を止めるマリアーヌ

『・・・そろそろ休むか?咲華・・・』

『・・・はぁっ・・・はぁっ・・・もうダメ・・・
 ありす・・・マリアに任せるわ・・・』

『・・・わかった』

そして今度はマリアーヌがありすを背負った

『・・・別に重くないだろうに・・・・・・』

『重いとか・・・じゃ・・・なくて・・・』

『まあいい・・・ この辺りで少し・・・休もう』


『・・・休んでる暇は無いだろうな』


どこからか男性の声が聞こえた
その刹那・・・辺りが黒い霧に包まれる
咲華は唇をかみ締めた

『・・・一閃・・・!?
 こ、こんな時に・・・!』

『・・・言わなくてもわかるな?
 さぁ・・・・・・渡してもらおうか?』

『ありすを・・・物みたいに・・・言わないで・・・!』

『・・・ふん 声を出すのがやっとではないか
 おとなしく渡せば・・・危害は加えないが・・・どうする?』

『私は・・・ありすを・・・護って・・・みせるわ・・・
 ・・・・・・だから・・・!!』

『・・・・・・そうか
 なら・・・痛い目にあってもらうしかないな
 ・・・・・・ん?』

マリアーヌがいなくなっていることに気づく一閃
そんな一閃の様子を確認した咲華は「してやった」と笑みを見せる

『・・・貴様・・・』

『・・・ありすだけは・・・・・・護り抜いてみせるわ』

『・・・・・・貴様に用はない
 我の前から消えろ・・・』

そう言うと一閃は拳を握り締め力を右手の拳に集中させた

『失せろ・・・』

ズバッ

一閃が技を放とうとしたその瞬間・・・一陣の風が一閃の脇を通り抜けた

『何奴・・・?』

一閃が振り返ると後ろには一人の少年と一人の少女
楓とクラウスの姿があった

『・・・フン  あの時如月がてこずったという奴らか・・・』

『・・・手も出せない女の子に攻撃するなんて・・・酷いんじゃないか?』

楓が口を開く
一閃はそれをなんとも思わないかのように流した

『目的のためだ  それ以外のなんでもない・・・』

『少女誘拐が目的なんですか?』

『・・・そこの女  既に分かっているのだろう?
 わざわざ問う必要もあるまい・・・』

『・・・それなら・・・・・・私が相手します』

『何?お前が?
 ・・・・・・ふん、多少なりできるようだが・・・我には到底及ばぬな』

ボッ

突然一閃の右手が燃え上がった
一閃はゆっくりと後ろを振り返る

『・・・あくまで戦おうというのか・・・?
 愚かな・・・』

『・・・あの人たちは・・・関係ありません
 やるなら私だけに・・・』

どうやら咲華が一閃の右手に炎を放ったらしい

『あいにく・・・そうはいかないのよ』

如月が咲華の背後から現れる

『な・・・!?』

如月はボロボロになったマリアーヌを肩に担いでいた

『マリア!?』

『・・・ゴメン  ・・・ドジった・・・』

そう言うとマリアは気を失ってしまった
咲華はその姿を見て冷や汗をかく
「・・・・・・やっぱり・・・強い・・・
 私では・・・敵わないのかもしれない・・・でも・・・やるしかない・・・!」

咲華は決心した
命を犠牲にしても大切な人を護る・・・と

『生き残りはどうしたんだ?如月』

『・・・飛んでっちゃったわ・・・』

『飛んだだと? そんな馬鹿な・・・』

『急に白い翼が出てきたのよ・・・なんなのあれ?』

『そりゃ、ペガサスの力だろうな』

凪がいつの間にか如月のすぐそばに立っていた

『さて・・・こいつらはほっといて面倒なことにならないうちに生き残りを捕獲しようぜ?』

凪が一閃と如月に声をかける
如月はマリアーヌをその場におろす

『待ちな・・・さい!』

咲華が声を絞り出す
凪達三人は聞こえていないかのように無視して駆け出した
・・・と思いきや、数歩で足を止める

『・・・探す手間は省けたようだ』

凪がそんなことを呟くと空から白い羽が舞い降りてきた

『・・・あり・・・す・・・?』

咲華がぽかんと空を見上げている
それにつられて楓とクラウスも空を見上げた
空には・・・白き翼を持つ一人の少女
その姿はまぎれもなく「澤咲ありす」の姿だった

『光魔法・・・ついに・・・目覚めたか・・・』

マリアーヌが口を開く
横になったまま・・・薄くまぶたを開きありすの姿を見つめている
ありすは目を閉じたまま・・・涙を流し空中に停滞していた

『争いはやめて・・・ お願い・・・』

ありすが口を開く
瞳に大粒の涙を溜めて・・・言葉を発した

『・・・ダメ  お願い・・・!』

その刹那・・・ありすから無数の光が発された
その光は気分を安らかにしてくれ、全ての傷痕を癒してくれるかのようだった

『ありす・・・』

ボロボロだったはずのマリアーヌの怪我が綺麗サッパリなくなっている
まるで何事も無かったかのように歩き出すと彼女はありすにこう言った

『・・・ありす、念じて
 ・・・・・・大切な人を護りたい・・・と』

『大切な・・・人・・・』

『そう・・・  ただそれだけを念じて・・・』

『・・・私は・・・大切な人を護りたい
 私の大切な人を・・・』

ありすから発される光が強くなる

マリアーヌはクラウス達の方を向きこう言った

『あなたたちは・・・何者・・・?
 ・・・・・・まぁ・・・今はどうでもいい
 二人は・・・光の加護を受けることができない・・・
 ありすの大切な人じゃないから・・・』

『・・・?』

話がよく見えないクラウス

『魔法を唱えて・・・
 ・・・・・・あいつらに向かって』

マリアーヌは凪達三人を指差した
凪達はそれにピクッと反応する

『何のつもりだ・・・?
 お前は宝石の精霊だろう?パルシアに逆らうことは許されないはずだぜ?』

『・・・私が決めたことだ
 ・・・・・・たとえパルシアだろうと・・・この信念は変えられない
 私を受け入れてくれたありすを・・・護ると誓った』

『・・・・・・まぁいいや
 まとめて葬ってやろうか・・・』

『凪・・・あまり酷いことはしないほうがいいんじゃない・・・?
 相手は子供よ・・・?』

『・・・いや、ありゃ子供じゃないさ
 立派な戦士の目をしてやがる・・・・・・』

マリアーヌは再びクラウス達に指示を出す

『・・・私が合図したら魔法を放って
 私が光を・・・一箇所に集中させる・・・
 それを・・・・・・発射して』

『・・・わかった、言われたとおりにすればいいんだな?』

『私を信じて・・・』

『わかりました!』

そしてマリアーヌは詠唱を始めた
ありすの光がマリアーヌの目の前に集結する
あまりの眩しさに目がくらみそうなほどだった

凪達はマリアーヌが何をしようとしているのかに気づき、とっさに魔法障壁を展開した  

その数秒後マリアーヌが叫んだ

『放て!!!』

その合図と同時に楓とクラウスが魔法を放つ
それぞれの風は一つになり大きな風の刃となる
そしてその刃が光と同化した
そして巨大な光の刃となって凪達に襲い掛かった

『・・・まずい! 一閃、如月、逃げろ!!』

危機を感じ取った凪が叫んだ
しかし既に時遅し、凪の声が途切れると同時に巨大な光が凪達三人を包み込んだ
光は三人を包み込んだままその場に停滞している

『・・・邪悪なる者よ・・・裁きの光にて浄化せん・・・』

ありすが静かにそう呟くと光は破裂した
光のあった場所に三人の姿は無かった

『やった・・・?』

ただボーっと見つめていた咲華が口を開く
マリアーヌは静かにうなずいた

『あちらへ送り返した・・・ 当分は・・・大丈夫だと思う』

ドサッ

何かが落ちる音
人が落ちたような音が聞こえた
ありすだ
ありすは力尽きたかのようにぐったりとして地面に横たわっている
どうやら力を使い果たしてしまったようだ
背中の翼も消えている

『・・・目覚めの瞬間から・・・力を使うことになるなんて・・・・・・』

マリアーヌは寂しそうな表情でありすを見つめた
今思うと・・・さきほどから彼女の表情は自分の感情にしたがって変わっていたような気がする
怒りの時は表情に怒りを表し・・・悲しい時は悲しみの表情を浮かべていた

『みんな・・・無事・・・だよね・・・?』

かすかに目を開けたありすがそうささやいた
全ての疲れを癒すような微笑で・・・マリアーヌを見つめていた

『・・・ありす  ・・・・・・ありがとう』

そんなありすを見てマリアーヌも微笑み返すのだった・・・・・・

To be continued......


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