『何があっても・・・絶対に護り通してみせる
 ・・・・・・だから心配するな』


------Story05〜Alice's Episode〜『友』------


『ねぇねぇ、マリアーヌ』

『マリアでもいい・・・
 マリアーヌって呼びにくいだろうし・・・』

『そんなことないよ?』

『・・・でも、マリアでいい』

『うん・・・わかった
 ところでマリアってどこ出身なの?』

『・・・どこだろう
 わからない・・・・・・』

何気ない少女の会話
夕方の公園
時計はPM4:30をまわっていた
遊んでいた子ども達も家に帰り、ここにいるのは二人の少女だけ

『マリアの髪って綺麗だよね
 青紫色なんて見たことないよ
 それに比べて私なんて・・・全然綺麗じゃないし』

『そうか・・・?
 ありすの髪も綺麗・・・  私はそう思う』

『そ そうかな?』

ほんのり顔を赤らめるありす
どうやら照れているようだ

『ところで・・・ありすは怖くないのか・・・?』

『ん?何が?』

『ありすは顔も知らない何者かに追われている・・・
 捕まったら何をされるかわからない・・・
 そんな状況にいるのに・・・怖くないのか・・・?』

『・・・・・・・・・・・・』

ありすは少し考える
夕日が眩しい・・・

『怖くないよ  咲華が護ってくれる・・・
 それに・・・怖がっちゃダメだと思うんだ』

『・・・・・・ありすは強いんだな』

『そ、そんなことないよ
 私なんて全然・・・・・・・・・』

『・・・もっと自分に自信を持て
 私にもわかる・・・
 ありすは・・・強い魔力と・・・強い心を持っている
 誰にも・・・負けない』

マリアーヌがこぶしを強く握って微笑む
そんな彼女に元気付けられたありすは笑顔で礼を言う

『ありがとう  なんだか・・・自信が湧いてきたよ』

『頑張れ・・・  応援するぞ』

『うん、ありがと
 ・・・・・・でもマリアって・・・』

『それは・・・気にするな
 大体わかった・・・
 ・・・・・・ありすを捕らえたりはしない』

『・・・え?』

キョトンとするありす
マリアーヌは空を見上げて静かに言った

『・・・なんとなくだけど・・・察しはついた
 ・・・ありすはペガサスを持つ人間だ
 それはすなわち世界を救う人間・・・・・・
 それを捕らえるのには・・・理由がある
 ・・・・・・もちろん腹黒い理由だろう』

『・・・・・・???
 世界を救うって・・・光魔法のこと・・・?』

『そう・・・ 光魔法のことだ
 ・・・・・・私の守護石がありすの魔力に反応している
 守護石が認める魔力・・・それはすなわち光だ』

『守護石?』

マリアーヌは静かにポケットから小さな石を取り出した

『・・・これのことだ』

『うわ〜・・・綺麗♪
 まるで宝石みたい・・・』

『・・・実際にこれは宝石だ
 アクアマリン≠ニいう私の守護石・・・』

アクアマリンは夕日に照らされて綺麗に輝いていた
夕日以外の輝きを発しているようにも見えた
ありすはその輝きに見とれていた

『ペガサス≠フ存在は・・・知っているか?』

『よく本とか漫画とかで見かけるペガサス?』

『そう・・・  それの実物だ』

『え!?ペガサスって実在するの・・・?』

『ペガサスはありすの中にいる・・・
 そのペガサスが光を司っているんだ』

『え?私の中に・・・?』

いまいち理解できないありす
この手の話題は理解できないのが普通だ
といっても魔法を知らない一般人に限るのだが

『ペガサスは心の中に住む
 ペガサスを呼び出す方法は・・・私にもわからないけど・・・』

『私の中に・・・ペガサスが・・・・・・
 ・・・ ・・・ ・・・』

ありすはうつむいて急に黙ってしまった
そんな様子を心配したマリアーヌが声をかける

『どうした・・・?』

『・・・ ・・・ ・・・
 最近・・・いろいろありすぎて・・・よくわからないの
 魔法とか・・・ペガサスとか・・・・・・
 私は・・・普通の中学生じゃなかったの・・・・・・?』

『ありす・・・・・・』

『・・・ゴメン
 こんなこと言ってもどうしようもないのは・・・わかってる
 でも・・・・・・唐突すぎてわからないの・・・』

マリアーヌは守護石をポケットにしまう
そして小さな手鏡を取り出した
その手鏡を開いてありすの前に差し出す

『せっかくの綺麗な顔が台無しだ・・・
 そんな悲しい顔をするな・・・・・・』

『マリア・・・・・・』

ゆっくり顔を上げるありす
マリアーヌはそんな彼女に笑顔でこう囁いた

『不安ならいつでも私を頼るといい
 友達なんだ・・・いつでも力になる
 ・・・・・・襲われることがあったら私が護ってやる』

『ありがとう・・・
 私・・・護られてばかりだね』

ありすは弱々しい笑顔を見せる
吹っ切れていないのだろう

『心配するな
 私は奴らに抵抗力がある・・・アクアマリンの加護が・・・』

『うん・・・・・・・・・』

『じっくり考えるといい
 焦ることはない・・・
 考えがまとまるまでの間は私が護ってやる・・・』

夕日を見上げてマリアーヌはこう言った

『こんな私を受け入れてくれた・・・
 そんな大切な人に命をかけるのも悪くない・・・』

昔・・・マリアーヌは独りぼっちだった
暗い闇の中に独り・・・
親の顔も見たことがない・・・
育ててくれる人さえいなかった
しかし守護石のおかげで何もせずとも成長していった
途中・・・同類の種族に出会うことがあったが、自分を受け入れてはくれなかった
そんな彼女を受け入れてくれたありすは彼女の中でとても大きな存在になっていた

『大切な・・・人?』

『そう・・・私のただ一人の友達・・・・・・・・・』

『え・・・・・・?』

『私は独りぼっちだったんだ・・・
 ・・・ありすと出会うまでは・・・の話だけど』

『・・・さっき言ってたパルシアさんは違うの・・・?』

『・・・ ・・・ ・・・違う
 パルシアには・・・・・・ただ従っているだけだ・・・』

『従う・・・・・・?』

『パルシアの守護石には・・・相手を従える能力がある
 そういうわけでパルシアに逆らうことはできない・・・
 あの守護石に対抗できるのは竜の血を引く者だけ・・・』

『りゅ、竜!?』

『・・・ありすの兄のことだ』

『え?え?えぇ!?』

突如飛び出した「竜」という単語
そしてその血を引いているのが「兄」であると言われ混乱するありす

『・・・冗談?』

『・・・・・・冗談を言ったつもりはないが・・・』

『で、でも竜って・・・』

『ペガサスがいるんだ
 ・・・竜がいても不思議じゃない』

真面目な表情のマリアーヌ
ありすは更に混乱してしまった

そしてありすの頭にちょっとした疑問が浮かんだ

『あれ・・・?』

---仮に竜がいるとして・・・
  その血をお兄ちゃんが引いているのなら・・・
  私も同じなんじゃ・・・・・・?

『・・・どうかしたか?』

『え・・・?
 いや・・・・・・なんでも・・・』

---・・・・・・お兄ちゃんは竜・・・
  私はペガサス・・・
  ・・・・・・これって・・・どういうことなんだろう・・・

『ありす!』

最近聞きなれた声が聞こえてくる
声の主はありすに駆け寄ってくる

『あ・・・咲華』

『ありす、大丈夫?
 怪我してない・・・?』

『え? ううん、大丈夫だよ』

咲華はマリアーヌをキッと睨んだ
やや殺気が込められている

『・・・何者だ?』

『・・・ ・・・ ・・・
 アクアマリンを司る精霊マリアーヌ・キャストライト
 それが私の名・・・』

『・・・何故宝石の精霊がこんなところにいる・・・?』

恐い顔のまま尋ねる咲華
そこにありすが口を挟んだ

『お、落ち着いて咲華
 マリアは・・・そういうのじゃなくて・・・・・・』

『宝石の精霊の首領格はありすのことを狙っているの
 目の前の彼女が宝石の精霊なら・・・その一味としか考えられないわ・・・・・・』

『・・・確かに私はその一味・・・
 でも・・・敵じゃない
 私はパルシア達とは違う・・・』

『・・・・・・どういうこと?』

相変わらず恐い表情のままの咲華
マリアーヌはそんな彼女の表情に動じる様子もなく冷静に話す

『ありすは世界を救う存在だということがわかった・・・
 そんなありすを捕らえるのには・・・必ず理由があるはず
 私は聞かされていなかったが・・・・・・大体想像がついた』

『・・・おそらく自分の種族より強い力を持つペガサスを恐れ・・・
 覚醒する前に始末しようという考えか・・・・・・
 またはその種族を暗殺していた組織の関係・・・
 ・・・・・・他に考えられるのは・・・単純にペガサスを利用したいだけなのか・・・
 そんなところかしら・・・?』

いまいち話の内容を理解できないありす

『ありすが危険なのには変わりはない
 ・・・それに・・・そんなことをたくらむ輩に手を貸したくはない・・・』

『・・・それでいいの?
 首領格に逆らったら自分の命が・・・』

『・・・・・・なんとかなる
 悪は嫌いだ  ・・・それに協力するくらいなら死んだ方がいい』

『そう・・・・・・』

『・・・だから私は敵じゃない
 でも・・・・・・戦うというのなら・・・』

マリアーヌから殺気が放たれる

『や、やめて二人とも!』

ありすが二人を止めに入る
そんなありすの様子を見て二人は殺気を鎮めた

『マリアは私の友達だよ
 ・・・・・・今日できたんだけど
 だから・・・咲華・・・』

『・・・・・・心配しないで
 戦わないから・・・
 彼女は敵じゃない・・・そういうことね』

そして咲華とマリアーヌの二人は互いの目を見つめる
少し間を置いて咲華が口を開いた

『友達の友達は友達ね
 私は瑠璃垣咲華  よろしくね』

咲華が手を差し伸べる
マリアーヌは無言でその手を見つめる
数秒間を置いてその手を握るマリアーヌ

『ん・・・よろしく』

そんな二人を見てホッとするありすだった

・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・
・・・・・・
・・・

だんだん日が暮れてきた頃
三人はベンチに座っていろいろな話をした

『なら・・・協力してくれるの?』

『・・・ありすを失いたくないから』

いろいろな話といってもずっと咲華とマリアーヌだけが話している状態だ
ありすはただ黙ってその話を聞いているだけ
でも、自分のことについて話してくれているのはわかってるので静かに話を聞いていた

『あ・・・ゴメンね、ありす
 話に入れなかったよね・・・』

『ううん いいよ
 私を心配してくれての話なんだよね?
 ・・・・・・だから私・・・嬉しいよ』

『ありす・・・・・・・・・』

『や、やだなぁ・・・
 咲華ってば・・・そんな悲しそうな顔しないでよ』

『何があっても・・・絶対に護り通してみせる
 ・・・・・・だから心配するな』

『うん、ありがと・・・マリア』

そして咲華が立ち上がる
そして少し背伸びをしてこう言った

『さ、日も落ちてきたし・・・帰ろうか?』

『うん』

澤咲ありす、瑠璃垣咲華、マリアーヌ・キャストライト
三人はありすを中心に子どものように手をつなぎ夕日に向かって歩いていくのだった


三人が去った後の公園
一人の少年が三人の後姿を見つめていた

ズバッ

黒き影が一体襲い掛かってきたが、
振り向くことなく風の刃のようなもので斬り捨てる少年

『ありすさん・・・』

その少年はポツリと少女の名前を口にするのだった・・・・・・・・・・・・

To be continued......


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