『こうして会ったのも何かの縁・・・
 とりあえず・・・よろしく』


------Story04〜Alice's Episode〜『寡黙少女』------


『せっちゃん・・・どうしたんだろ』

静かに呟くありす
あの日から一週間が経過した
あの日以来謎の男とは遭遇していない
ただ・・・変わったことといえば「刹那が姿を消したこと」だ

兄の椿から話を聞いたところ、
謎の小さな黒い生物に攻撃されて気を失い・・・目を覚ましたらいなくなっていたらしい
刹那の家を訪ねても「まだ帰ってない」とのことで・・・携帯もつながらない
つまり・・・音信不通で完全に行方不明になってしまったらしい

『はぁ・・・・・・』

窓の外の景色を見つめながらため息をつく
席についてからずっとこんな調子である
にぎやかな教室内で彼女は特別静かだった

『どうしたの?ありす』

隣の席に座っていた咲華が尋ねる
どうやら咲華はこのことは知らないらしい

『・・・うん
 せっちゃ・・・いや、朝斬先輩が・・・ね』

『・・・朝斬先輩?
 う〜ん・・・知らないかも・・・』

『お兄ちゃんの親友なんだ
 いつも二人一緒にいるよ』

『・・・で、その先輩がどうかしたの?』

『・・・いなくなっちゃったの』

『・・・いなくなった?』

『うん・・・・・・
 行方不明なんだって・・・  連絡もとれないし・・・
 もう一週間になるのかな・・・』

窓を見ながら説明するありす
その表情はどこか寂しげである

『ん〜・・・もしかしたら・・・
 いや・・・・・・そんなわけないよね・・・』

『? どうかしたの?』

『ん? いや・・・ちょっと引っかかることが・・・』

『引っかかること?
 それって・・・』

ガラッ

会話の途中で担任が教室に来てしまい、
会話は中断されてしまった


しばらく時間が経過し、現在三時間目の授業中
ふと窓から外の景色を見るありす
窓際最後尾なので外を見てもバレることはまずない
とはいえど・・・隣の席にいる咲華にはバレてしまっているようだが

外を眺めていたら男子生徒らしき姿が見えた
制服からして高等部の生徒だろう
ありすはその生徒のことをじっと眺めている
その男子生徒は携帯を見ているようだ
メールでも読んでいるのだろうか?

---お兄ちゃん・・・?

その男子生徒の姿はどこかで見たことがある姿だった
彼は兄の「澤咲 椿」によく似ているのだ
いつも見ているから見間違うはずがない

・・・とかなんとか考えているうちに、
椿と思われる生徒はその場から去ってしまった
授業中ということもあり、あまり深く考えないことにした


そして放課後を迎える
特にやることもなかったのでそのまま帰ろうとするありす
そこで咲華と一緒に帰ろうと思い、咲華の姿を探した

結局・・・校舎で咲華を見つけることができず、
校庭に出てみる
しかし咲華の姿は見つからない
「先に帰ってしまったのだろうか」
そう思ったありすだったが、とりあえず中庭も確認してみることにした

中庭へ向かう途中・・・木陰にうずくまっている少女を見つけた
その様子が気になったありすは少女に近づいてみる

---なんだか・・・苦しそう・・・

そんな少女を放っておけなかったありすはその少女に声をかけてみた           

『あの・・・・・・どうかしたんですか?』

『・・・・・・・・・・・・』

聞こえていないのか反応がない
さすがに意識がないわけではなさそうだが・・・

---苦しくて声が出せないのかな・・・?

『あの・・・大丈夫ですか?
 なんだか苦しそうですけど・・・』

『・・・・・・私?』

少女が顔を上げて答えた
その表情を見たところ苦しそうではない
といってもほとんど無表情に近い表情だった
だが・・・とりあえず体調は悪くなさそうである

『・・・!
 ・・・・・・もしかしてペガサスの・・・?』

驚いたように尋ねる少女
全く覚えがないありすは言葉に詰まってしまった

『あの噂・・・本当だったのか
 「ここで寝ていると不思議な人に会える」という噂・・・』

「不思議な人」と言われてキョトンとするありす
そんなありすの表情に気づいた少女は

『あなたは・・・「ありす」
 そう・・・ジェリアスが持ってきた写真の人物・・・
 間違いない・・・・・・』

よくわからなかったが、
自分のことを話しているんだと気づいたありすは少女に尋ねてみることにした

『あの・・・?』

しかしどう訪ねたらいいか言葉が浮かばなかったので「あの・・・」しか言えなかった

『・・・悪者には見えない
 ・・・・・・・・・どうする・・・?』

なんだかブツブツ呟いているようだ

『あ、あの・・・どちら様ですか?』

とりあえず彼女が誰なのか聞いてみることにした
青紫色の髪で、同じ青紫色の瞳
見た目はありすと同じくらいの年齢に見える
服装からしてありすの学校の生徒ではないようだ
少し変わった服を着ている
この少女には・・・全く見覚えがない
こんな特徴的な髪の色の知り合いがいたら覚えているはずだ

『私・・・?
 私は・・・マリアーヌ・・・
 マリアーヌ=キャストライト・・・』

少女は静かにそう名乗った
どうやら日本人ではないらしい
青紫色の髪は地毛なのだろう

『マリアーヌさん・・・ですか
 私は澤咲ありすです』

『マリアーヌでいい・・・
 そんなにかしこまる必要もない・・・』

消えてしまいそうな声でマリアーヌが言った
喋るのが苦手なのだろうか
それとも単純に寡黙なのか・・・

『う・・・うん  わかった』

『こうして会ったのも何かの縁・・・
 とりあえず・・・よろしく』

ちょっと話しかけただけなのに・・・
マリアーヌは友好的に手を差し伸べてきた
握手を求めているのだろう
相変わらず彼女の表情は無表情である

『うん よろしく』

マリアーヌが何者なのかいまいちわからなかったが笑顔で答えるありす
マリアーヌの手を握る力はとても弱々しかった

『・・・・・・・・・とりあえず様子を見る』

ボソリとマリアーヌが呟いた

『そういえば・・・私のこと知ってるの?』

写真がどうのこうの言っていたのを思い出してありすは尋ねてみることにした
するとマリアーヌは一言・・・空を見上げて

『捕まえて・・・・・・』

そう言った

『え・・・?』

ありすにはその言葉の意味が理解できなかった
簡潔すぎるというかあまりにも短すぎる

『頼まれた・・・
 「ありすを捕まえて」・・・と』

『・・・?』

ありすは一週間前の出来事を思い出した
あの日襲ってきた謎の男のことを・・・
あの男はありすを連れて行こうとしていた
もしかしたらその関係者かもしれない・・・

そう考えたありすは警戒してマリアーヌから少し離れた
その様子を見たマリアーヌは無表情のままこう言った

『大丈夫・・・ しばらくは様子を見る
 ・・・・・・捕まえる理由がよくわからないから』

『捕まえる・・・理由?』

『・・・・・・パルシアは「捕まえて」とだけ言った
 理由は話してくれなかった・・・
 だから私は「ありすは悪人だ」と勝手に思い込んでいた・・・
 でも・・・違った
 今、目の前にいるありすは悪人には見えない・・・』

『・・・・・・・・・・・・』

ありすにも自分が捕らえられなくてはならない理由がよくわからなかった
別に犯罪を犯した記憶はない
他にも追われるような事件を起こした記憶もない

『だから様子を見ることにした・・・
 どうして捕まえなくてはならないのか・・・
 それがわかるまで・・・手は出さないでおく
 だから・・・・・・警戒する必要はない』

『そ・・・そう』

話はよくわからなかったが、とりあえず危険ではなさそうだ
根拠はないが彼女は危険な人物ではない
そう判断したありすはホッと胸をなでおろした

『じゃぁ・・・安心していいんだよね?』

『・・・今のところは・・・だけど
 ・・・・・・・・・・・・
 しばらくは・・・友達として付き合ってほしい』

うつむきながらマリアーヌはそう言った
「友達になってほしい」
という意味と受け取っていいだろう
断る理由もなかったのでありすは笑顔で受け入れた

『もちろんだよ
 改めて・・・これからよろしくね』

『うん・・・・・・よろしく』

元気がないわけではなく、
もともとこういう喋り方なのかマリアーヌは静かにうなづいた
ただ、その時の彼女の表情は笑顔に見えた

To be continued......


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