『でも・・・ありす・・・
 あなたが生き残っていた・・・
 唯一・・・あなただけがその種族の生き残りなの』


------Story03〜Alice's Episode〜『光魔法』------


『咲華・・・咲華!』

気を失った咲華の名を呼ぶありす
さきほどの戦闘で疲れたのか・・・咲華は目を覚まさない
しかし、息はある
とりあえず無事のようだ

ガラッ

閉まっていた教室の扉が開かれた

『ありす!』

『・・・お兄ちゃん!』

『俺もいるぜ?』

『あ、せっちゃん』

『「あ」って何だよ・・・』

ありすの兄「椿」とその友人「刹那」が現れた
ありすの声を聞いて駆けつけてくれたようだ

『ところでありす・・・その子は・・・?』

咲華を見て椿が問いかける

『咲華・・・ 瑠璃垣咲華
 今日転校してきた子だよ』

『咲華・・・?
 ・・・・・・・・・・・・聞き覚えがあるような・・・ないような・・・』

首をかしげる椿
そんな兄の様子を見てありすは

『覚えてる?
 8年前・・・私とよく遊んでたんだけど・・・』

『8年前・・・  瑠璃垣・・・
 ・・・・・・・・・確かにいたような気がするな
 確か・・・兄がいなかったか・・・?』

『うん いたよ
 名前は・・・・・・・・・・・・』

『・・・・・・・・・・・・・・・』

どうやら二人とも思い出せないらしい
というかのんびり考えている場合ではない
そう気づいたありすは

『そ、そんなことはいいとして・・・
 咲華が・・・・・・!』

『寝てるのか?』

『なんか気を失っちゃったみたいなの・・・
 どうしよう・・・?』

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・

『はいはい・・・っと
 あとは寝かせてればOK♪』

保健教師が咲華をベッドに寝かせる
ここは保健室
椿が咲華を背負ってここまで連れてきたようだ
椿は連れてきた後、ありすに任せてどこかへ行ってしまった
まだ夕日が見えるがそろそろ夕日が沈む時間帯である

『ありがとうございます  春希先生』

『ところで・・・彼女どうしたの?
 なんか吐血してたみたいだけど・・・』

とても答えにくい質問をされてしまうありす
どうやって先生に説明すべきかあたふたと慌ててしまう
「魔法を喰らいました」なんてとても言えたものではない

『まさかとは思うけど・・・魔法でも喰らったのかな?』

『!!
 あ・・・いえ、あの・・・』

図星を指されて更に慌てるありす
無意味に手をパタパタさせている

『あはは、冗談冗談☆
 ま、しばらくそっと見ててあげてね
 私はちょっと職員室に行ってくるから』

そう言うと先生は保健室を出ていった
・・・かと思うと、扉から顔だけ出して

『もし何かあったら遠慮なく相談してね
 「魔法」関連のことでも・・・ね・・・ な〜んて☆』

そして先生はクスクス笑いながら職員室へ向かっていった
ありすは頭にクエスチョンマークを浮かべながらその姿を見ていた

---先生・・・魔法のこと知ってるのかな・・・?

そう思わせる発言だった

そして咲華の寝ているベッドへ向かう
相変わらず目を覚まさないまま・・・眠っている

『咲華・・・』

その名をそっと呟く
「護り人」
それは一体どういうことなのか・・・?
さっきの男のようなのから護るということなのだろうか・・・?

いまいち答えが見つからないありすだった

『ねぇ、ありす・・・』

『ひゃっ!?』

突然声をかけられる
声の主は・・・咲華だった
どうやら目を覚ましたらしい

『よ、よかった・・・気がついたんだね
 ちょっとビックリしたよ・・・』

『・・・運んでくれてありがと
 大分よくなったよ』

力のこもっていない笑顔で咲華が礼を言う
力はこもってなくても、随分回復したようである

『うん・・・
 さっきの出来事が気になって仕方ないんだけど・・・
 話してくれるかな・・・?』

急に空気が重くなる
咲華は少し考えて・・・

『うん、わかった
 でも・・・今から話すことは・・・あまり信じられないものかもしれない            
 それでも・・・信じて
 すべて・・・「真実」だから・・・』

真剣な表情でそう言った
ありすは静かにうなずくと・・・咲華はそのことを話し始めた

『さっきも話したように・・・この世界には「魔法」が存在するの
 そのほとんどが自然魔法・・・
 つまり・・・いろいろな「理」を司る魔法なの
 私もその「理」魔法を使うんだけど・・・
 ありす・・・あなたは違う』

『違う・・・? どういうこと?』

『あなたは・・・「光」を司っているの』

『光・・・・・・?』

『そう、「光」
 「理」との違いは・・・癒しの力が強いことね
 その反面・・・理のような強力な攻撃はできないんだけど・・・』

『癒しの力・・・』

『簡単に言うと「回復魔法」
 理魔法にも治癒系のものはあるんだけど・・・光魔法は特別強いの』

『そうなんだ
 凄い能力なんだね』

『ええ  普通の回復なら理のでも十分なんだけれど・・・
 光魔法の場合は・・・どんな傷、病でも回復できる・・・
 そう、8年前・・・不治の病を持っていた私を治したように・・・』

『・・・・・・・・・それって・・・
 すごく・・・役立つ能力なんじゃ・・・』

『そうね
 だから・・・・・・昔はあなたの種族を狙う輩が多かったの
 あんな便利な能力があったら病気や怪我なんて怖くないものね
 そんな輩は独り占めしたくて・・・あなたの種族を狩っていったわ
 そして・・・捕らえられた者は一生その輩のために働かされて・・・
 ・・・・・・死んでいったの』

『そんな・・・
 ・・・・・・・・・酷い・・・』

ありすの目から涙が零れ落ちる

『・・・ありすは優しいね
 その人たちのために・・・涙を流せるんだから』

透き通った涙がありすの頬をつたう
その涙は・・・死んでいった者たちに捧げられるのだろうか

『そして・・・その種族はいつしか姿を消し・・・
 「絶滅した」と噂されているわ』

『え・・・?』

『でも・・・ありす・・・
 あなたが生き残っていた・・・
 唯一・・・あなただけがその種族の生き残りなの』

『私が・・・生き残り・・・?
 で、でも・・・そんな話・・・一度も聞いたことないよ・・・』

『・・・・・・そうね
 あなたの正体を知ってる人は・・・ごく一部の人間だけだから
 私や・・・私の兄
 そして・・・あの青年・・・「凪」の一味・・・』

『ま、待って!
 私だけが生き残り≠チて・・・お兄ちゃんは・・・?』

『・・・・・・・・・・・・・・・』

『咲華・・・・・・?』

『・・・ごめん
 ありすは・・・まだ知らなかったんだね・・・』

『・・・?』

『この話は・・・また今度でいいかな?
 そろそろ下校時刻だし・・・』

『え・・・?』

『・・・それに まだ・・・その時じゃないから』

ガラッ

『体調はどうかな?』

突然扉が開き、保健教師「春希」が入ってくる
用事が済んだので戻ってきたらしい

『あ・・・先生』

『そろそろ下校時刻だよ
 もう・・・大丈夫だよね?
 具合悪いままなら・・・家族に連絡入れとくけど?』

『いえ、大丈夫です』

そう言うと咲華はベッドからおりた

『そう  ならよかった
 じゃ、気をつけて帰るんだよ☆』

『はい  ありがとうございました』

ペコリとお辞儀をして咲華は扉に向かって歩き出した
咲華と春希がすれ違おうとしたその時・・・

『あのことは・・・まだあの子には話さないほうがいい・・・
 あれだけ兄のことを信頼しているんだ
 受けるショックは大きいだろうし・・・』

『ええ わかってます』

『何かあったら力になるよ
 その時は・・・一声かけてよね』

『ありがとう・・・春希さん』

『無理はしないようにね
 あんまり頼られないのも・・・従姉として悲しいから・・・さ』

『はい』

『じゃ、気をつけて』

ありすに聞こえないような小声で会話して・・・咲華は去っていった
そして春希は軽くため息をつくと・・・

『ふぅ・・・仕方ないわね  あの子も・・・』

そう言った
その様子に少し疑問を感じたありすは

『あの・・・先生と咲華は知り合いなんですか?』

『ん? あぁ・・・従姉妹だよ』

『従姉妹だったんですか』

『まぁ、妹みたいなもんだよ、咲華は
 ささ、外も暗くなってきたよ』

『あ、は・・・はい
 ありがとうございました』

お辞儀をしてありすは保健室を後にした
そして少し駆け足気味に昇降口へ向かうのだった


『「澤咲ありす」・・・か
 本当の名前は・・・「ありす=C.クライン=姫梓原姫梓原きしはら」なのに・・・ね
 今まで・・・幸せに暮らせてたんだろうね・・・・・・』

春希は静かにそう呟いた
「ありす=C.クライン=姫梓原」
この名前は一体・・・何なのだろうか
ありす本人はこの名前のことは知らず・・・
ずっと「澤咲ありす」だと思い続けていた・・・・・・・・・

To be continued......


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