『私は・・・あなたの護り人
 あの日からずっと・・・心に決めていたの』


------Story02〜Alice's Episode〜『護り人』------


『あの・・・さくらちゃ・・・』

『咲華でいいよ』

『う・・・うん 咲華・・・
 転校してくるなんて知らなかったよ・・・
 連絡くれればよかったのに・・・』

『・・・ゴメン いろいろあって・・・』

『でも・・・こうして会えたから・・・それだけで嬉しいよ』

夕焼けが照らす教室・・・
そこに二人の少女の姿、そして影がある
下校時刻を過ぎたわけでもないのに外の音が聞こえない
二人以外に何も存在しない空間がそこにあった

『変だね・・・ とても静か・・・』

『・・・・・・』

『咲華?』

『・・・特殊な力≠ェこの教室に働いている・・・・・・
 今は・・・誰にも邪魔されたくないの
 だから・・・誰の声も聞こえないし誰もこの教室に入れない・・・』

不思議なことを言い出す咲華
突然だったためありすが理解するのには少し時間が必要だった

『え・・・?どういうこと・・・?』

『ありす・・・あなたは「魔法」って信じる・・・?』

『ま 魔法・・・?』

『そう 魔法』

魔法だなんて非現実的すぎる・・・
実際にありえるものではない
魔法を信じるなんて・・・まるで幼稚園児のようだ

・・・しかし、咲華の目は真剣だった
曇りのない澄んだ瞳
彼女が冗談で言っているとは思えない

『・・・・・・魔法があったら素敵だな・・・と思うよ』

しかし・・・やはり見たこともないものを信じることはできない
日常で「魔法」を見かけることなどないのだから・・・

『やっぱり・・・信じられないよね』

『い いや・・・でも・・・』

『8年前のことを思い出して・・・
 8年前のあの日のことを・・・』

『あ・・・・・・』

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

『そうだ!私が分けてあげるよ!』

『え・・・?』

『私が治してあげる
 私の不思議な力で・・・』

『・・・その力って・・・自分の命を削っちゃうアレ・・・?』

『うん よくわかんないけど・・・そーゆーの』

『ね?だから・・・死なないで・・・』

『でも・・・いいの・・・?
 そんなことしたら・・・・・・』

『・・・さくらちゃんと会えなくなるなんて・・・嫌だからね・・・・・・』

『ありすちゃん・・・・・・』

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

8年前の記憶がよみがえる

『不思議な・・・力・・・』

小さく呟いた重要なキーワード
不思議な力
別名・・・魔法

『そう・・・8年前のあの日・・・
 不思議な力で・・・あなたは私を救ってくれた・・・
 その不思議な力≠魔法≠ニいうの』

『あの力が・・・魔法・・・』

意外な答えにたどり着き、その答えをまだ受け入れられないありす
不思議な力▼・・、あの時はその力がどういうものなのかよくわからなかったし・・・
親も教えてくれなかったため不思議な力≠ニ呼んでいた

同時期・・・小学校に通っていたありすがクラスメイトにその力のことを話したら、
みんなに馬鹿にされてしまった・・・という過去がある
それ以来・・・誰もその力を認めてくれる人がいなくて・・・
ずっと隠しているうちに・・・いつしかその存在を忘れかけていたのである

『ありす・・・  その力は恥ずかしいものじゃないよ
 立派なものだから・・・・・・』

静かに・・・そして悲しそうに咲華が話す

『ありすには・・・強大な魔力が備わっているの
 その魔力があれば・・・どんなひどい怪我でも・・・不治の病でも・・・治すことができる
 そんな素晴らしい能力を持ってるんだよ』

『え・・・?』

『だから・・・忘れないで・・・  自信を・・・持って』

『で・・・でも・・・魔法なんて・・・誰も信じてくれないし』

8年前・・・クラスメイトに馬鹿にされた記憶がよみがえる
みんな良い友達だったのに・・・あのことを話したら・・・急にみんながよそよそしくなってしまった
むしろ「避けられるようになった」という表現の方が正しいかもしれない
それから元の信頼関係を取り戻すまで・・・結構時間がかかったものだ
あんな経験は・・・二度としたくない
ありすにはそんな恐れ≠ェあった・・・

『大丈夫・・・  私が信じてるから・・・
 他にも・・・信じてくれる人はいるよ
 きっと・・・・・・いや、絶対!』

力強く咲華がそう言った
そんな咲華を見てるとなんだか自信が湧いてくる
そしてありすは・・・

『うん・・・  ありがとう』

と、笑顔で返すのだった

『その力を使いこなせるようになれば・・・たくさんの人を救えるようになると思うんだ
 ありすには・・・それだけの強い魔力があるから
 だってあなたは・・・・・・』

ガシャーン

突然ガラスが割れるような音が響いた
その刹那、教室中が黒い霧のようなもので蔽われていった

『! 気づかれた・・・!?』

咲華の目つきが真剣になる
額には冷や汗・・・
黒い霧に蔽われたこの教室を見てもわかるように・・・禍々しい空気が漂っている
しかし、何が起こっているのかまだ理解できていないありすは・・・ただあたふたと戸惑うことしかできなかった

『あ、あの・・・咲華  これは・・・?』

ありすが問う

『下がって』

咲華はそう答えた

何も見えない闇のような空間・・・
いつの間にか教室全体が霧で蔽われ、そんな闇が広がっていた
すると・・・突然正面から妙な形をした生物が姿を現した

『まさか・・・こんな低級のEvil spiritに気づかれてしまうとは・・・』

『イービル・・・スピリット?』

『簡単に言うと「悪霊」のことよ
 それが身体を持ち・・・実体化した姿が目の前にいる生物みたいになるの』

『・・・そ そうなんだ・・・
 ・・・・・・気持ち悪い・・・』

種類にもよるが、現在ありすたちの目の前にいるEvil spiritはとても醜い形をしている
Evil spiritはこの世に未練を残したまま死んでしまった生物の霊が変化した姿である
それは人間だけに限らず・・・動物・・・魚・・・虫、あらゆる生物の霊である

『見たところ・・・数は2、3体といったところね
 相手の強さもたいしたことはなさそう・・・
 それなら・・・』

自分に話しかけるように呟いた後、
咲華はどこから取り出したのか・・・辞典のような分厚い書物を手に取った
そしてすばやく目的のページを開き・・・

『**** *** ** ******...』

ブツブツと呪文のようなものを唱え始めた
そしてポケットからマッチ棒を取り出し・・・

『Ignition!』

「ドゴォォォン」という爆発音と共に黒い霧が爆発した
そして一瞬のうちに咲華の目の前は火の海と化す
これはマッチ棒一本でできるものではない
明らかに別の力≠ェ働いていた

『・・・・・・』

無言で辺りを見回す咲華
ありすは咲華の後ろで唖然としている
その現実離れした光景に開いた口が塞がらない・・・といったところだろうか

『ありす、これが魔法≠セよ』

静かにそう言う咲華
咲華の視線は常に前方に向けられていて「敵を探している」という様子だった

『これが・・・魔法・・・・・・』

『そう、これは攻撃用の自然魔法
 ・・・まぁ、よくあるゲームの魔法と同じイメージでいいよ』

突然目の前の炎が、かき消されたかのように一瞬のうちに消えてしまう
再び黒い霧が広がる

『・・・?』

ガッ

異変に気づいた時には遅かった・・・
一瞬のうちに咲華がはじかれたように飛ばされ、
その勢いのまま・・・壁に激突する

『かは・・・っ・・・』

咲華の口から赤い液体が飛び散る

ザッ・・・
霧の中からフードに身を包んだ謎の人物が現れる

『争いはやめましょう 咲華さん
 あなたに勝ち目はありません・・・ おとなしく従ってもらえませんか?』

謎の人物は咲華を見てそう言った
黒い霧とフードに身を包んでいるせいでよく見えないが・・・
声から察するに男性・・・ 年齢は17前後といったところだろう

『! ・・・あなたは・・・・・・!』

『ふふ・・・1週間ぶり、とでも言いましょうか
 探しましたよ咲華さん・・・
 まさかこんなところに居たとはね・・・
 さぁ、教えてもらいましょうか?
 あの一族≠フ生き残りの所在を・・・』

どうやら咲華とこの男性は知り合いらしい
話の展開が読み取れないありすはただそのやり取りを眺めることしかできなかった

『だ・・・め・・・
 ありすには・・・指一本触れさせません・・・!』

今にも消えそうな声で咲華が答える
腹に手を当てたまま・・・立ち上がることができない咲華
今の攻撃のダメージは相当大きいらしい

『・・・ありす▼・・・・・
 そう・・・ 生き残りの名前は「ありす」というのですか』

『ありすは・・・私が護ります』

『そう・・・
 どうしても教えてくださらないのなら・・・力ずくで聞き出すまでです』

『・・・・・・っ』

苦しそうな表情を浮かべ・・・咲華はその場に倒れる
とても辛そうである

『咲華!』

『あ・・・ありす・・・
 逃げて・・・ここから・・・』

『で、でも・・・そんな・・・』

『・・・・・・あなたが「ありす」ですか?』

男性がありすに話しかける
ありすは少し怯えた様子で・・・

『あなたは何なんですか・・・?
 どうして咲華を攻撃するんですか?
 やめてください・・・ こんなこと・・・』

そう答えた

『なるほど・・・あなたがここに来た理由はそういうことだったのですね
 ふふ・・・ 確かに傍にいたほうが護りやすいでしょうね
 しかし・・・おかげで生き残りを探す手間が省けましたよ』

ありすの答えを無視して咲華に話しかける男性
今度は怪しげな笑みを浮かべて

『ではありす殿、一緒に来てもらえますか?』

少しずつありすに近づく男性
男がありすに手を差し伸べたその瞬間・・・

「ボッ」

男性の手が燃え上がった
男性はさほど驚いた様子もなくその炎を振り払うと・・・

『なんのつもりですか?
 既に勝負はついている・・・ でもまだやるというのですか?』

男は冷静に咲華に問いかけた
咲華はよろけながらも立ち上がり・・・

『何があっても・・・ありすを護ります
 そう・・・誓ったんです』

『そうですか・・・
 そう・・・ あくまでも抵抗するというのか』

男の目つきが鋭くなる
ありすはその眼に強い殺気を感じて背筋が凍るような感覚を覚えた
咲華はそんなありすが恐怖に飲み込まれてしまわないように少しでも勇ましい姿を見せようと

『ありすには・・・指一本触れさせない!』

そう、叫んだ

『愚かな・・・
 この力の差を見てまだ諦めないのか・・・?
 瑠璃垣の子息も堕ちたものだな・・・』

咲華を見下すような眼で見る男
咲華は切れてしまうほど唇を強くかみ締める

『・・・・・・ありすは・・・あり・・・すは・・・!!』

『あなたの兄上は素晴らしい御方だった
 だから多少なり敬意を払っていたつもりだったが・・・
 その必要もなかったみたいだな?
 所詮妹は妹・・・兄と同じようにはなれない、か』

『な・・・っ』

一瞬咲華の闘志が揺らぎ、表情には動揺の色が見える
咲華は一歩後ずさり隠し切れない動揺を抑えようと必死になっていた

『どうせこのまま生かしておいても仕方なかろう・・・
 ならばせめて俺の手で・・・』

急に黙る男性
彼は廊下側のドアを見て一言・・・

『・・・まずいな』

そう呟いた

『この魔力は・・・おそらく・・・
 ・・・・・・  ・・・これは計算外だ・・・
 まさか二つの種族が近くに居たとは・・・』

独り言を言ったかと思うと、
男性はありすたちに背を向け

『今日のところは見逃してやる
 さすがにあの種族が相手では分が悪い・・・
 だが、覚悟しておけ
 俺達にとって今のお前を倒すことなど造作もないことだ・・・』

そう言って「黒い霧」という闇の中へ消えていった

『・・・・・・・・・っ』

咲華が力尽きたように倒れてしまう
かなり無理をしていたのだろう
立っているのも・・・辛いほどに

『咲華・・・!』

『ありす・・・ゴメンね
 あなただけは・・・巻き込みたくなかったのに』

『ううん・・・
 そんなことより咲華・・・
 あの人・・・ いや、これはどういうことなの・・・?』

ありすが問う
体力の限界を迎えていた咲華はかろうじて声を絞り出して答える

『・・・話すと長くなるよ
 このことについては・・・また・・・今度・・・
 今は・・・まだ・・・その時じゃないから』

『・・・・・・そう・・・なんだ
 うん、わかった・・・』

少し悲しそうにありすがうなずく
そんなありすを見て咲華は

『大丈夫・・・安心して
 何があっても・・・ありすだけは護るから・・・』

『え・・・?』

『私は・・・あなたの護り人
 あの日からずっと・・・心に決めていたの』

笑顔でそう言った

『8年前のあの日から・・・ずっと・・・』

静かに咲華が呟き・・・彼女はそのまま気を失ってしまうのだった・・・            

To be continued......


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